週末開拓民奮戦記

ハンドカット&セルフビルドのログハウス(71)

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2006年4月
梅が咲いている期間というのは、例年植物の植え傷みが少ない時期で、山の庭はてんてこ舞いの忙しさである。
週末の僅かな時間しかないので、雨にでも降られるとたちまち予定がずれ込む。
雨は平日に降っておいて欲しいと勝手なことを言ったせいか、このところ週末は雨が多く泣かされている。
しかし今年の天候はどうだろう...。
4月も10日になって、やっと早咲きの紅梅が花開いた。
例年、多少のズレはあっても、桜がほころびかける頃に梅の満開を見ることなどはなかった。
梅はやっとこれからが盛りだが、紀伊半島の太陽は日中はだんだんきつさを増し、樹木の移植は流石に無理になってきた。
後は草花と挿し木苗の移植で、これは私の仕事である。
案件はいろいろ残したままだが、次回からkiiさんは、やっと庭の土木工事から解放されて大工仕事に戻ることになる。

作業の一部を・・・。
石組み 手軽なため通路との結界には丸太を使用していたが、防腐処理を施していない丸太は数年でだめになる。
だからといって、ハーブや山菜がどこに顔を出すか判らないので、防腐処理はしたくない。
思い切って丸太を一掃し、土を掘り込んで石を並べることにした。
総延長は相当のものになるので、この作業は簡単には終わりそうにない。
毎年少しずつでも延長していければいいと思っている。
今年はイノシシの被害が少なかったが、鹿やカモシカの被害は相当なものだった。
根こそぎ一掃されることはないけれど、新芽を齧られて再起不能になるものも少なくない。
それでもイノシシよりはマシだと無理やり自分を納得させている。
丸太で棚段を作る 懸案事項がやっと一つ片付いた。
ここは裏山に石楠花の一団が控える庭の奥の小山。
石垣だったのだが、数年前にイノシシに散々荒らされてメチャメチャになっていた。
他の作業に追われていたので放っておいたのだが、土が流れ落ち、二人静の群れに押し寄せてくるに及んで、優先順位が繰り上がった。
土留めの丸太を組み、土を入れる。
手前の棚二ヶ所と奥の棚の計三ヶ所に一輪車17杯の土を運び、kiiさんはフウフウ・・・。
「お疲れ様!」とコーヒーを片手に成果を眺める。
「手前の棚にはヒメシャガを増やそうか。奥の棚には何がいいかな?」そんな会話も弾む・・・。
丸太で階段を作る ここもイノシシに荒らされて崩れかけていた場所。(画像で左上の棚部分)
この左下方はクリンソウのエリアである。
ここにも土留めの丸太を入れる。丸太は数年で腐るだろうが、これは差し替えていけばいい。

その傍らの小さな坂道は急で滑りやすく、雨が降った後は何度もスッテンコロリン。
kiiさんは黙々となにやら作業をしていたけれど、離れて植え込みを続けていた私は階段を作っているとは知らなかった。
「こんなのどう?」と言われて覗きに行き吃驚した。
「いずれ作り直すけれど、取り敢えず暫定的にね・・・。これで尾骶骨打撲はマシになるだろう?」
この階段のおかげでずいぶん楽になった。
階段の脇はカンアオイに丁度いいと、早速植え込む。
10種ほどあるカンアオイは定位置を与えられず可哀想だったが、ここでうまく根付いてくれたら嬉しい。

kiiさんが大切にしているサフラン畑 サフランが分球して小さくなっているのを気にはしていた。
おまけにこの辺りは鹿の通り道にもなっているようである。
観察していると彼らはどうも、丸太で棚を作った所は避けて通っているらしい。
うっかり端先に脚を乗せてドジな目に遭うのは私ぐらいだと思うけれど、彼らも危険な目には遭いたくないと本能が教えるのか...。
それで、ここも丸太で土留めの棚を作った。
サフランはブルーベリーと共にkiiさんの大事の子である。
この二つに関して、kiiさんの思い入れは私のかなり上をいく。
サフランはスペインのラ・マンチャ地方が世界一の産出国だそうな。
ラ・マンチャは「乾いた土地」という意味があり、我が庭ではこの土手が最適だと定めたのはkiiさんである。
高価なサフランの雌しべは薬や料理に用いられ、品質のいいものなら1g1000円以上もする。
好きなパエリアにふんだんにサフランを使いたい、そんな思いから栽培を始めたのは私だったが、その頃はkiiさんはそれほどの思い入れは無かったように思う。
おそらく、あのすみれ色の花のひと群れを見たときに、魅せられてしまったのだろう。

丸太の棚を作り、植え場所を広げ土を作るのはkiiさん。私は球根を一つ一つ分け、元肥を入れて埋め込む。
肥培できて一面の花を見せてくれるのを祈りながら、kiiさんは優しい眼差しで水を遣る。

ログが完成した後には、レンガや石やタイルを配して庭造りに取り組めるだろうが、何しろ今は後手後手に、必要なところに手を掛けるしかない状態である。
我が山の庭は「素朴な自然風の庭」、他人(ひと)には荒れ放題に見えるかもね・・・。
痛む腰をさすりながら、そんなことをひとりごちる。

陽ざしが明るさを増すごとに、鳥たちがいっそう賑やかである。
庭を訪れる鳥たちはいつも10種を下らない。
最近は鳥の鳴き声のCDを愛聴しているせいか、鳴き声で理解できるようになってきた。
耳を澄ませながら、「これはコガラだね! あっ、ヤマガラ!」などと顔をほころばせるひと時、しみじみと幸せを感じる...。


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