週末開拓民奮戦記

ハンドカット&セルフビルドのログハウス(88)

大きな画像とリンクしています。
2007年5月(4)
週間天気予報では週末は落ちの予報だったが、ありがたいことに好転した。
今回もkiiさんが先発部隊となる。私は所用があったため、土曜の夕方に電車で野迫川へというパターンになった。
晴れなのに・・たくさん作業ができたのに・・と、私は週末の貴重な晴れ日に損をした気分。
長時間を電車に揺られる山行きは気が重かったのだが、最近は慣れたのか結構楽しんでいる。
以前から高野山では外国の人たちをよく見かけたものだが、世界遺産に登録されてからは特に多いような気がする。
飛び交う外国の言葉に、一瞬、此処は異国かと錯覚して苦笑する。
共に世界遺産に登録されている中辺路、小辺路街道も、山の仕事に追われてまだ巡ったことはない。
何しろ野迫川村は奥高野と呼ばれ、小辺路街道の入り口にあたっているのだ。
すぐそこにあるとなかなか行かないものだが、落ち着いたら再々訪ねてみたいと思っている。
リビングキッチン裏面、小屋があった部分。間柱と筋交が入った kiiさんは前回の作業の続きをこなしている。
立てた柱の間に間柱と筋交いを入れ床板を張りと大奮闘。
とりあえず、仮設のトイレを設置しなくてはならず、そのための必要部分から工事している。午前7時には作業を始め、休憩もなしで走りっぱなしという点は相変わらず。
床がガッチリ
間柱と筋交いの奥に張ったコンパネは仮設トイレ用。いずれ撤去するため、解体した小屋の廃材を利用している。
38ミリ厚の根太代わりの床板は、これだけで飛んでも跳ねても大丈夫という頑丈さ。(上右画像)
この上に断熱材、コンパネ、そしてタイルが乗るのだから、下から冷気が上がる心配はまったくない。
仮設トイレが出来た 大工さん、電気屋さん、水道屋さんにと様々な変身は、慣れない身には大変らしい。
でもなんとか、廃材利用の仮設トイレ完成。これで一安心。
水とトイレだけは無くては困るものね...。
「どうせ仮設なんだから扉なんて要らない、カーテンだけでいいじゃないの。」という私に、「でも女性にはドアが必要でしょ。」とkiiさん。 それってどういうこと? つまり?
私は相変わらず、庭仕事、山菜仕事で追われている。
目の前のことをただこなすのみで、作業はジリジリ、いや大幅に遅れている。
それでいいじゃないかと、最近は開き直りの心境だが、これは諦めか、成長したのか...。

ところで、土曜日の午後、野迫川のkiiさんに高野山着の時間を知らせようと電話をした。
バス便が不便なため、迎えに来てもらう必要があるのだ。
「ウンウン、3時45分着ね。アッ、ちょっと待って...。」
電話の向こうからたえこさんの声が聞こえて吃驚。オダマキを届けに来てくださったそうな...。
お目にかかれないのが残念と思いつつ電車に揺られていた。
高野山に着いたら何と、たえこさんご夫婦のお迎えで嬉しいやら恐縮するやら...。
30分ほどの高野山〜野迫川倶楽部までの道中、おしゃべりに花を咲かせる。
ややこしい部分に取り掛かっていたkiiさんの作業が捗るようにと、高野山行きを申し出てくださったそうで、kiiさんはお陰様で思うところまで進んだと大いに感謝していた。

10歳も年下の知人が、脳出血で倒れ言語に障害が残り歩行も不安があるという知らせに、気持ちがズシリと沈み込んでいた私だったが、たえこさんご夫婦と話すうちにいつしか気力を取り戻していた。
山積している様々な事柄に押しつぶされそうになるけれど、私は私なりに、今を精いっぱいに生きよう...。

2007年5月(3)
走った...。
それぞれが、息を切らす思いで走り続けたという感の週末だった。
土曜日をフルに使うために、前日夕刻に野迫川入りした。
午前7時から作業を始め、仕事を終えて夕食の仕度や風呂の準備などを始めるのは午後7時。
食事を終える頃にはもう白河夜船である。
冬場は読書や映画を楽しんだりもするが、この季節はそんな余裕もない。
小屋が撤去された リビングキッチン内の小屋の取り壊しが、やっと片付いた。
ほぉ〜っと大きな吐息をついたkiiさんである。
傍から見ていても解体しにくい建物だということは理解できたし、おまけにkiiさんの一人作業だったから、長い時間が掛かったのも無理はない。
もっとも、間にはベランダの工事も組み込まれたから、この時間の経過は当然なのだが...。
(私は壁面のタイル剥がしを一面だけ手伝ったのみ。庭仕事の時期が来てしまい、以後は手伝えなかった。)
なにをする気かな? 小屋を一部取り壊して柱を一本追加した前回は(奮戦記82)、二人で重さに泣いた。
もっともウェイトの8割ほどはkiiさんに掛かっていたから、私には少しの負担だったはずだが、それでも力自慢の私が悲鳴を上げた。
「よし、頑張るぞ。」と根性を入れて意気を高める私に、「アッ、今回は多分お役御免。」とkiiさん。
←不審げな私を横に、なにやら仕掛けを始めた。
手回しウィンチ稼働中
杉の伐採をはじめとして、ログウォール積み、棟上などは勿論のこと、滑車とウィンチを使い、今まで様々な作業をこなしてきたkiiさんだったが、久々にまた知恵のフル稼働である。
今回登場したのは手回しウィンチ。
上げ下げや力の加えかたなどの微妙な調整には、電動よりも使い勝手がいいそうな。
重い柱が引き寄せられて、柱の上部のホゾが、ジリジリとホゾ穴にはまり込んでいく。  なんとなんと...。
カケヤで打ち込む 上部の大方がはまり込んだ後、カケヤで下部のホゾをホゾ穴に打ち込む。

前回があまりの大仕事だったために、すんなりいって拍子抜けの私。
kiiさんはこともなげに、「で〜きた、できた。」
こんなに楽に出来るなんて、前もこの手を使ってくれたらよかったのに...。
私は心のうちで小さく呟く。
スンナリいきすぎ、拍子抜け?
金具(ハゴイタ)でしっかり留めつける。 もっとも、私が相方ではかなりきつかったからこそ、こんなことを考え出したのだろうが。
必要が知恵の源だと、改めて思う。

組み入れた柱は金具(ハゴイタ)でしっかり留め付ける。
大引をはめ込む 防腐,防蟻剤を塗布して大引(おおびけ)をはめ込む、
大引の上に根太替りの床板の下張り(38ミリ厚)をするまでが今回の予定だったらしいが、いつもオーバーワークなのにその上をいく予定を立てるのは、相変わらずのkiiさんの悪い癖である。
これは次回へ持ち越しになった。
これが小屋を撤去したLKの奥部分
取りあえずはコンパネを仮張りして、私が落ちないようにとの配慮。
LK奥を見渡すと広さを実感する。
今まで小屋に収納していた道具類がLK内を占拠しているが、これで全容が掴めるようになった。
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倶楽部の朝はオオルリの囀りではじまる。それも決まって午前4時半である。
毎週思うことだが、彼らの正確さには呆れるばかりである。
4時半になると囀りはじめ、心地よく目覚めさせてくれる。
オオルリの様々な囀り方を楽しみながらまどろむ時間は、実に幸せである。
昨年に懲りたのかログには巣を作らないが、それでも我が庭はしっかりと縄張りに入っているようで、ケヤキや杉林、裏山で高らかに縄張り宣言をしている様子は微笑ましいものだ。
昨年の子育てを間近に見て、私たちには家族の一員のような親近感があるのだが、彼らは時折しか姿を見せてはくれない。留守のときは我が天下にしているのだろうが...。
鳥たちの鳴き声は、庭仕事の友として最上のものだと感じている。

ところで、今回は大荒れの天気で、またまた当たらない予報に泣いた。
雨の止み間に急ぎ摘んだ、山椒の若い枝先 kiiさんは屋根の下の仕事がほとんどだが、私の作業はメインが屋外。
少しの止み間をみては外の仕事に走り、ひどく降りだすと内の仕事をする。
摘んだ山ブキを煮たり、山椒の若い枝先を佃煮に、乾燥させて刻んだスギナをミキサーで粉末にしたり、いずれにしても休む暇がない。
「山蕗のたいたん」と「山椒の佃煮風」 スギナ茶の完成品
kiiさんはどちらかというと山蕗の濃い佃煮風は苦手で、風味を生かし、薄味で粉鰹や山椒を効かしたものが好みである。
季節がずれ込む野迫川では、山蕗のシーズンには山椒はまだ実を付けていない。
その代わりに新芽をたっぷり刻んで入れるのだが、今年はうちの山蕗も相当に時期を狂わされているのか、まだ僅かしか顔を出していない。若芽の時に鹿たちの餌になってしまったのが一因かもしれない。

山椒の枝先はプチンと摘み切れるほど柔らかい。こんな風にして使えるのは今しかない。
山蕗にもたくさん入れたが、他に使い道はないものかと思案する。
刻んで鰹の粉をたっぷり入れ、少し濃いめにして佃煮風に炊いてみたら、これがなんという美味しさ。
熱々ご飯にとてもよく合う。
ザルいっぱいの山椒が小さな容器一つ分になってしまうが、こんな贅沢な使い方をしていいのだろうか...。
これだけ食すると、身体から山椒が匂いたつようですこぶる心地いい。
この春は山椒熱中人の私たちである。

日曜日、そろそろ疲れてきた、休憩しようかという時間に、丁度よく村のFさんご夫婦が寄ってくださる。
お二人とも野迫川の出身だが、平生は町で住まい、最近週末を過ごすためによく村に帰られるようになった。
同じ年代で気心が合い仲良くしていただいているが、お二人の笑顔に接すると元気が湧いてくる。
手作りのものがとてもお上手で、柿の葉寿司や山葵寿司など絶品。今回も自家製の味噌や野菜をいただいた。
「味噌は手前味噌で...。」と笑っていらしたが、旨みとこくがたっぷりでとても美味しい。
いつかご教示願わなければと思う。
無農薬の野菜は玉ねぎやキャベツ、ミズナ。どれも甘くて味わいが濃い。
「野菜作りは素人だからしっかり勉強したいね。」と、いつもながらの見事な出来ばえを前にkiiさんと頷きあう。
一緒に戴いたチンゲンサイの苗を植えながら、「ほんと、笑えてくるほど素人過ぎるわ。」と独りごちる私だった。
Fさんとロビンちゃんが発見した鹿の角 草むらでFさんと愛犬ロビンちゃんが発見した鹿の角。

ゆうちゃんが実物を手にしたら、吃驚するに違いない。
しかし見事なものだ...。
この冬、倶楽部を散々荒らしまわってくれた彼らの落し物を、複雑な心境で眺める。
右見て左を見たらもう草が生えている、そう表現したいほど繁茂する草の勢いはすごい。
先週とは違う種類の草たちが、我が物顔に巾をきかせている様子は、ため息以外にない。
タコほどの手が欲しいとか、猫の手でも借りたいなどと、ついぼやきが出る。
独りで庭を管理する限界は超えていることを自覚させられ、、この季節は一番悩むものだけれど、これほどひどい年はまた初めてである。
ここにも暖冬の影響が?
それとも、庭中をひっくり返して埋もれていた草の種に陽の目を当て、育ちやすいようにと土まで柔らかくしてくれたシシ軍団のお陰?

でも、やるしかないのだ。
やる気と根気が諦めに変わるその日まで...。、今年はその日が早そうな気がして恐い。

暮れなずむ帰路の車中で、「疲れたけれど、お互いに頑張ったね。」と話し合う声には充足感が満ち溢れていた。
(・・・と思う。)


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