週末開拓民奮戦記

ハンドカット&セルフビルドのログハウス(89)

大きな画像とリンクしています。

2007年6月(2)
このところ夏野菜の定植に懸命である。
開拓途上の倶楽部は、まだ林立する杉や朽ちかけた伐倒木の山で空きスペースが少なく、畑作りには頭を痛めている。「こんなに木や花を植えるからだよ。普通はこんなに植えないよ。」というkiiさんの呟きが聞こえてきそうだが、kiiさん自体も今はそれを気に入っているのだから、これは共同責任ということにならないだろうか...。
山菜やミョウガやミツバ、青紫蘇、エゴマが一番大きな顔をしている我が家の畑を見渡して、どこかに隙間がないかとキョロキョロしている。

カボチャ、ズッキーニ、トマトやミニトマト、キュウリに菜っ葉類、チマサンチュ、トウモロコシ...。
種を蒔いて芽が出るときは.一番嬉しい。
勿論、収穫の喜びはそれはそれで嬉しいものだが、ポコッ、ポコ、ポコと芽出しの音が聞こえてくるような、小さな緑の行列を目にしたときの喜びはそれに勝る。
野菜が収穫できる季節は、朝市に寄らずに山に直行できるので、移動時間短縮の意味もあって有り難い。
ところで、私は野菜の苗はよほどのことがない限り買いたくない。なるべく種から育てたいほうである。
これは生まれ育った十勝で、種を蒔き、慈しんで育てていた母の姿をいつも間近にしていたからだろう。
旨みの濃い野菜を娘たちの記憶にも残して欲しいと、僅かな隙間を見つけては植え込むのである。

現代の風潮にもかなり逆らっていて、私は日本に昔からある野菜に心惹かれている。
それも、在来種の自家採種をいずれ辿り着く先として定めている。
いまや絶滅種になってしまったものや地域で細々と育てられているものが多いと聞くが、改良されて生育の安定度が増しても本来の味わいが大幅に変化したものや、世代交代が難しいF1交配種にはかなり抵抗がある。
F1交配種と呼ばれるものは、自家採種が可能なものとまたそれがひどく困難なものとがあるやに聞く。
仮に種を採取できても、複雑な交配の過程を経ているので、そこから優良種を選抜していくためには長い年月が掛かるのだそうな。
また、F1交配種を作り出した企業の戦略に踊らされていることを思うと、釈然としないものがある。
もっと恐いのが遺伝子組み換え作物である。
そのものにも懸念があるが、それと交雑した種の、人体への影響はどうなのだろう。
長い年月を経て、子どもたちのそのまた先の世代に、否定的な答えが出ないようにと祈るばかりである。
遺伝子組み換え、F1交配種の時代に、原種・在来種に拘ることもいいではないか...。
農を生業にしている人たちから見れば、歩留まりが悪く、個性が強すぎる在来種よりも、品質が安定して収益に繋がる品種のほうが良しとされるに決まっている。
原種・在来種に拘るなど素人の戯言だと切り捨てられそうだが、お許しあれ!
何しろ年寄りというものは、新しいものにはいたく臆病なのである。(年寄り・・・ちっとも思っていないくせにね。)
遺伝子組み換え、F1交配種については、いずれまた、ひとりごとにて...。
草刈りをしながら、朽ちた足場丸太を燃やす。あぁ、忙しい! 週末の一日は草刈りに奉仕させられているkiiさん。
この季節だけはどうにも仕方がないと諦めの表情だが、なるべく早く家造りに戻してあげたいと私も必死である。
肩から先がだるくて上がらなくなるほど懸命に作業しているが、いっかな追いつかず、kiiさんにすれば、見るに見かねて手を出さざるを得ない、というところなのだろう。
草刈りの合間には、昨秋外したまま放置されていた足場丸太も燃やす。
夜は外(そと)食。暮れなずむ山々を眺めながら簡単バーベキュー。一日のうちで一番寛げるひと時である。
バーベキューの内容は決まっていない。その日手元にある有り合わせ。これから秋までは、こんな食事が多くなる。
今年は花たちが少しずつ早めなので、そろそろホタルが舞うかと、食後にそぞろ歩きをしてみたが気配もない。
そういえば、ホタルブクロもまだ咲いていないのだもの...。
例年は7月の10日前後がその旬だが、今年はやや早いのではと思っている。
コンテナ材を解体している。積み上げられていく材を見るのは楽しい。 草引きから解放された翌日は、奈良の田中君が運んでくれたコンテナ材を解体する。
たくさん積み上げたままだったので大仕事だが、木材を触っているときのkiiさんはいかにも楽しげである。「草刈りのときとは表情が違うね。」と茶化す私に、返す言葉も弾んでいる。
解体されて積まれていく板を、どんな風に利用しようかと考えるのは楽しい。
最近kiiさんから一つ提案があった。
「keiさんってよく落とすよね。茶碗に皿、鍋とかボール...。」  ドキッ、よく見ているものだ。
「リビングキッチンの壁はタイルのエコカラットで決まりだけれど、keiさんの場合、台所部分をタイルの床にするのはかなり危ういんじゃないの?」
確かに、内心思わないでもなかったのだ。
「料理は手軽に早く」がモットーの私は、何かにつけて荒っぽい。
迅速はクリアしているが、丁寧が遥かに取り残されている。
おまけにステンレス製品が大好きときているから、鍋やボールは多分、ボコボコになってしまうだろう...。
「床に板を張ることも一考してはどうか。」という話に、夢と実用のどちらを選択するか、揺れる私である。

2007年6月(1)
時折雨には降られたけれど、おおかたは曇りベースで推移。天気は比較的落ち着いていた週末だった。
日曜日は雨の予報が出ていたので少々びくついていたのだが...。
何といっても日中に晴れるのは嬉しいことだから、天の神様に感謝している。
おかげさまで庭仕事は捗ったが、雨の折にと予定していた山菜&野草茶仕事は、まったく進まず夜なべ仕事になった。
しかしまぁ、kiiさんには参ってしまう。
今年初めて作った、山椒の若い枝先と鰹の削り粉の佃煮風をとても気に入ったようで、何処へ行ったのかな、静かだなと思ったら、僅かな時間を見つけてはその山椒の枝先を摘んでいる。
ボールに二杯も山ほどに積み上げて、「お願い、作ってね。」
山椒にはまり込んだkiiさんを見るのは、とっても楽しいものがある。

kiiさんは日中は敷地内の草刈り。丸一日、刈払い機をブィンブィンいわせていた。
たまたま隣地のFさんも草刈りに来られて、二台の器械が共鳴して山々に響くのは、勇ましい音楽のようで楽しい。
雨が降ったときは屋内で臨時トイレのドアノブを取り付けたり、LK内を片付けたり、次の作業への段取りをしたりと、仕事も様々に尽きることがない。
少し片付いたリビングキッチン 大分片付いた(これでも...。)リビングキッチン内。
画像に写っているのは半分ぐらいのスペースだから、全体ではかなり広く感じる。
写真には写っていない、自動カンナや諸道具類がでんと置かれた手前部分を眺めて、「納屋を早く造らなくては、どうにもならないね。」とため息である。
家造りも庭仕事も、目先のことを片付けていくだけで精いっぱいの有様。
作業に追われていると、どうしてもかなりのオーバーワークになってしまう。
切り上げの時間を早めにして厳守しなくてはいけない、休憩時間もしっかり取らなくてはいけないと、毎週毎週、反省しきりの二人なのだが...。
週末作業の限界を最近とみに感じている。

カッコウが鳴き、ツツドリやホトトギス、ウグイスや常連のガラたち、ゲラたちが賑やかな野迫川倶楽部だが、勿論、オオルリの美しい高らかな囀りが一番幅をきかせている。
姿を追う時間が惜しく、草の山を作りながら耳だけを楽しませてもらっている。
昨年「オオルリの子育て」を読まれたオオルリに詳しい方から、丁寧なメールを何通か戴いた。
オオルリの生態などを詳しく教えて下さったのだが、その中にオオルリは他の鳥の鳴き方も真似るとあった。
昨年はとんでもない巣作り子育てで彼らも余裕がなかったのか、そして私たちも、緊張の日々だったからそんなことは気付きもしなかったのだが、今年は心穏やかに子育てをしているのか、いかにも堂々とした囀り振りで、しかも、ホトトギスやミソサザイの鳴き方を真似るのには吃驚して、kiiさんと二人で大笑いしてしまった。
声は相変わらず綺麗だから明らかにオオルリと判るが、調子は明らかにホトトギスやミソサザイのもの...。
昨年巣作りの際に堪能させてもらったお陰で、どんな鳴き方をしてもそれと判るようになったのが嬉しい。
物真似とはなんとひょうきんな一面かと可笑しかったが、当の本人(本鳥?)は鳴き方だけでなく、鳴き声も似せているつもりだろうか。巣の近くに寄せつけないための知恵なのかもしれない。
早朝からの作業で疲れてはいるけれど、深夜は30分ほどフクロウと遊ぶ。
「ホッ、ホー!!」と鳴き交わしているつもりの私を見て、kiiさんは呆れた表情である。

樹木の点検作業中 伸び放題の草に、何とかしなくてはと御神輿を上げたkiiさんだが、いざ庭仕事に取り掛かってみると、気になる点がたくさん。風で根が動かされたものあり、また、弱っているのかと覗いてみれば、黒蟻やカミキリムシの餌食になっている樹木もあったりで放っておけない。
今回はそんな作業にも時間をかなり取られてしまった。
樹木の点検作業中
しかし、こうして画像を見ていても、草ぼうぼうの有様がよく判る。
本番はこれからだというのに、考えるだけで気力が萎えるが、光をいっぱいに浴びる花たちを想像すると、ひたすら励むしかない。


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