週末開拓民奮戦記

ハンドカット&セルフビルドのログハウス(97)

大きな画像とリンクしています。

2008年3月(4)日29〜30日
少し間が空き、花たちが気になって居ても立ってもいられないという、町暮らしの日々を過ごしていた。
一刻も早く山に着きたいと心がはやり、食糧調達の寄り道は最小限にとどめて野迫川へとひた走る。
午前10時半には倶楽部着。敷地内に入ろうとしたところで、kiiさんが「ゲッ!!」と声を漏らした。
「なに?」と指差すほうに顔を向けたところ、なんと雌鹿が二頭。
「なっ、なにしてくれんねん!」と数歩近寄ったときに吃驚した。大きな雌鹿がその奥から飛び出し、またその後を追うように小さな雌鹿が一頭。思わず大声を張り上げて威嚇(?)する。揃って逃げ出した4頭の鹿を、こぶしを突き上げ大声でわめきながら、全力疾走で追いかけること60メートル。追いかけられた彼女らもさぞ吃驚したことだろう。一目散に逃げる、逃げる。そして川を渡って向かいの山へ...。カモシカに加え、4頭もの雌鹿軍団の食糧庫にされたのではたまらない。
「堪忍してよ!」と
ぼやく私に、「真っ白い臀部が綺麗だったねぇ!」と、kiiさんはのんびりと感想を述べる。確かにそれは否定できない。彼女らが消え去った後でもあの白くて美しい四つのお尻が目の底に残っているぐらいだ。
でも、これって許せないよ!!
大声で叫んだために声が枯れてしまい、その一日苦しい思いをさせられたことだった。
親鹿と二年子ぐらいの小鹿、その小鹿より少し大きめの二頭とは姉妹だろうか、仲良しファミリーという雰囲気だった。
「無謀なことをしないでくださいよ。野生動物を相手に追いかけるなんて普通の人はしないよ」とkiiさんからはきついお叱り。「了解。イノシシと雄の鹿とカモシカのときは追いかけないで逃げることにする」
牙や角で引っ掛けられて大怪我ということもあるそうだし、私も痛い思いはしたくない。
それに「山奥の村で、鹿を追いかけた熟々女、無謀な死」などというニュースネタにはなりたくないものね。

鹿騒動から覚めやらぬうちに、本日は三隣亡なり。
谷からの融水が途切れがちなので調査に行き、帰ると湧き水の配水管が一箇所で漏れ、おまけに排水管も一部欠損している。水がなくてはどうにもならない、排水が漏れるのも大変だと、急遽、応急補強修理に取り掛かる
水関連で手間をくい、その日は天井工事は大して進捗せず。
フィニッシュに向けて♪最後の列になったよ。 気を取り直して、翌日は早朝から天井板張りのフィニッシュに向けて頑張るkiiさんだった。
手間が掛かる部分なので、「アッ、間違っちゃった」「なんでかな、うまく入らないんだよね」と独り言が多い。
最後の列に取り掛かったのが左。私は横でワクワクしている。
最後の一枚を張るところが右。
いよいよ最後の最後。
この週末には仕上げたいと思っていたのだが、なんとか滑り込みセーフ。
「また次週に持ち越しなんて、ごめんだよ。けっこう長く掛かったしなぁ」

ひと仕事を成し遂げて、ホッとした表情のkiiさんだった。
結構広いよ。 リビングキッチンの屋根裏は結構広いでしょ。(左画像)
最初から計画していたのならもう少し高さを加減できたのだが、収納部としてはこれでも上々。奥の透明のビニールトタン部が窓になる。
窓作りの前にロフトからの出入り口を仕上げ、外部の軒天井を張り上げなければならず、そのための板材作りも優先事項。
天井張りが完成しました♪
その後屋根側に断熱材を入れ、ベニヤ板でカバーをしてしまえば完璧になる。
それでLKの屋根裏部屋が完成になるのだが、しかし家を仕上げるためには様々な作業が次々とあるものである。
張りあがった天井を下から見上げる。(上右画像)
板材が巾広のせいか相当インパクトがあるが、天井高が2950mmもあるので圧迫感はまったくない。
梁や桁がむき出しだった時よりも、部屋に広さを感じるのが不思議である。


ところで、「今回までは湧き水のバルブを開けておいたほうがいいのではない?」「もう大丈夫だと思うよ」
こんな会話が交わされて帰阪したのだが、今週は大阪でもかなり冷え込んでいる。
「凍っているかもね...」と呟やくと、一見平然としているが、kiiさんの心中は穏やではなさそうである。

水はひと頃のような痺れるほどの冷たさではなくなった。
まだぬるむところまではいかないが、水仕事をしていても堪えられる冷たさにはなった。
いずれ無用になるのだから仮の設備は最小限でいい。だから要らないと頑固に拒否してきたせいで、今の倶楽部には湯沸かし器がない。厳寒期には、ストーブの上で沸かしたお湯に手を浸けながら炊事をしてきた。
あの真っ赤になった手を懐かしく思える日も、いつか来るのだろう。

2008年3月(3)
「日帰りでおまけに雨では何もできないのに...」と渋る私のお尻を叩きながらの野迫川行き。
「私には仕事がいっぱいありますからね」とkiiさんはやる気満々。そりゃぁそうでしょうよ。屋根の下でできるんだもの。
キノコの植菌も終え、次なる作業に燃えているkiiさんである。
今回の作業予定は、天井板の最後の一枚を張り終えた際の、自身の抜け出し口確保。
最初の計画では、LK隅の天井に出入り口を作り、そこに簡易階段をかけようと思っていたのだが、天井高がかなりある上に、簡易階段では危険なこともあるのではないかとの懸念を感じだしたのである。
老齢化した場合に(厚かましくもまだしていないつもり)使用できないものでは意味がない。
まぁ、「ドジkeiはよく落ちる」も引っかかっていたことは否めないが...。
あれこれ模索した末、ロフトの吹き抜け部分に渡り廊下を作ろうという構想が生まれたのだった。

せっかく綺麗に張ったのにね。 綺麗に張り上げてある天井板を切り欠くのは勿体ない話だが、とにかく前に進まなくてはならない。
この青い養生シートを敷いた部分、2メートル×4メートルの空間がログの吹き抜けになる予定だったが、その吹き抜けの一部に廊下を渡そうというのである。
イメージはまだいまひとつ湧かないが、「屋根裏と渡り廊下の境にはドアもつけてキッチリ仕上げるよ」というkiiさんを信じることにする。
あら、こんにちは!
イメージが湧かないなどと言いながら、「ゆっくり歩けるように幅広にしてよね。寝られるぐらいの廊下もいいね」などと、注文だけはしっかりつけるのだから呆れたものだ。
ログ側から覗くLKの屋根裏。そりゃぁ、このほうが出入りはしやすい。 この屋根裏に出入りするときは必ず何かを移動させる筈だから、階段よりは廊下のほうが安全性が高いだろう。また、そうであればこそ、作ったものの利用することが少ない場所には決してなるまい。

この屋根裏に上敷きを敷いて寝袋を持ち込んだら、妻壁の窓から星を眺めてキャンプ気分になるね。そうそう、オンザロックなんぞをお供にしてもいいよね。ついでに読書用の蛍光灯ぐらい付けて欲しいな。希望願望はエスカレートして止まるところを知らない。
完成までには、注文事項は両手の指では足りなくなるのではないかと、自身でも密かに恐れている。

冷たい雨が一日中降り続き、春の気配を一歩後退させてしまったようである。
少しでも庭仕事をしたい私は、空を見上げてはため息ばかりついていた。

2008年3月(3)15〜16日
うららかな週末だった。まだぎこちないウグイスの初音も聞いた。
一週ごとに目まぐるしく変化していた天候もようやく落ち着き、これで一気に春が訪れるのか。
流石にもう雪は降らないだろうと楽観しているが、これからは陽気に誘われてついうっかり顔を出し、きつい霜に見舞われて回復不能に陥る植物が増える。寒地の宿命なのだろうが、これが実に厄介なのだ。
今年は植物たちも妙な具合で、順序良く咲かない。
朝の気温が0℃、日中の日向では25℃にもなるのだから花たちが急かされる気持ちは判るが、いつまでも雪が残り、それが消えたと思ったらこの陽気では、地中でもさぞかし慌てていることだろう。
私も慌てふためいている。
雪で外仕事が出来ないとぼやいていたのはつい先頃で、一気に暖かくなり、木々や草花の芽が動き出してしまった。
移植作業はどうしたものかと頭を抱えている。
運び上げるのが大変そう 二人とも其々、お互いの作業に邁進しなければならない時期なのだが、今回は目をつぶりキノコの植菌に取り組む。何しろ春は目の前、キノコの菌も入荷した。
これではやらなきゃ致し方ないと、
協力体制をとることにしたものである。
許可を得て切り倒してあった木を引き上げてこなければならず、それを運び込み植菌するまでが今回の予定だが、これはこの週末内になんとしてもやり遂げなければならなかった。
冬の間に鈍ってしまった身体を鞭打ちながら、二人ともフウフウ。ENDが決まっている仕事はきついものである。
流れを渡るのも丸太を持ち上げるのも背筋と腰に大いに響く。
寸法に小切って一箇所に積み上げ、さてどんな方法で上まで上げるか...。
「二人で抱えて斜面を上る」直径25cmの生木の丸太は、重量が相当あるのできついが仕方がないと思っていたら、「そうだっ」とkiiさん。
ウインチを引っ張り出して川の上に取り付けるまでが大仕事だったが、引き上げ作業は二人の連携でなんとかうまくいった。昼ごはんを忘れるほど懸命だったので、この間は画像を写す余裕もなかった。
運び入れたほだ木 今回の植菌は三種各500個。
何しろ初めてのことなので先のことなど予測も出来ない。
まぁ、試行錯誤しながら、いつかはものにできるだろうと考えている。
ドリルで穴を開ける 菌の駒を埋めこむ
運び込んだほだ木 ドリルで穴を開ける 種駒を埋め込む
土曜日の夜、二人の口からは「ヒィ、フゥ、ハァ」とハ行の言葉しか出てこない。
いつものことだが、頃合加減を知らないのが私たちの悪いところである。
しかし、と思う。こうしてお日様をしっかり浴び、限度オーバーまで動くことが元気の源なのだと。

土曜の夜に見た夢がまた傑作だった。
大鍋(何故か私の夢に出てくるのは大鍋が多い)にどっさり、小豆のアンコを炊き、それを抱えてスプーンで食べている私の姿が目覚めてもリアルに脳裏に残っていたのである。
それも口の周りにアンコをいっぱいにつけて拭いながら、まるで盗み食いのいたずらっ子そのもの。
「疲れていたんだよ、きっと」とkiiさんは笑い転げるが、それにしてもどうしてアンコがでてきたのか。
食べたいという願望が意識の底に強く潜んでいたのか、それとも疲労回復には甘いものが一番という観念からか。

なんとか無事に仮伏せが終わり、キノコ栽培第一段階が完了して一安心。
試しながらいろいろ種類を増やしていきたいと思っているが、うまくいったらいいなぁ。

2008年3月(2)8日〜9日
先週のポカポカ陽気は何処へやら、曇りベースで時々思い出したように晴れ間が出るのみ。一日中冷たくて春は足踏み状態である。ゲンキンなもので鳥たちの声も少なく、野迫川は今、早春賦の世界そのものである。
kiiさんは相も変わらずの天井張り作業が続いている。
(同じ作業ばかりで面白みがないのだが、これは記録も兼ねているので暫しご辛抱くだされ。)

束を切り欠く 束のところで、やはり手間は大幅に増大。
金具部分の刻み込みが多いので、進捗状況はよくない。
それでも一歩、一歩、着実に進んでいる。
天井板をギリギリに切るものだから、難儀して叩き込んでいる。
(→)
天井板を叩き込んでいる
「ゆとりを持たせて切ったらどうなの?」と尋ねると「これにはそれなりの意味があるのだ」と一蹴されてしまった...。
どうも、ぎりぎりきっちりに打ち込んで火打ちの役目も果たさせようということらしい。
「蹴っても踊っても大丈夫だよ。びくともしないねぇ」
上ってはドッシンドシンとするものだから、私は相当に嫌がられている。
あと三枚だ 今回はここまででタイムアップ。
おぉっ、あと三列だ。これから先が一番の手間喰いなのだが、それでもゴールは目の前。
ところで、最後の一枚を張り終えたらkiiさんはどこから出るのだろう。
そこで例の渡り廊下構想が登場することになる。
今回はどんな風に知恵を産み出すのかと、とても楽しみにしている。

2008年3月(1)1〜2日
雪景色の倶楽部を見慣れていた目には、久々の土の色は新鮮だった。
雪は日陰にところどころ残っているものの大方が融けていた。
これが、北風を遮りしかも日受けである我が地の、最大の長所といえる。
道路もノーマルタイヤで走行できるそうだから、先週までとのなんという違いだろう。
「もう三月、は、は、春だよ!!」
煌く陽射しに思わず浮かれる私に、「お水取りが済まなきゃね」とkiiさんが水を差す。確かに...。
朝晩はまだ冷え込みがきつくシバレているけれど、太陽が顔を出すと気温は一気に14〜5℃まで上がり暖かい。
ただし、
陽が翳るとあまりの温度差にかえって震えている。
それでも明るさにさそわれるように鳥たちが賑やかに囀りだし、すぐそこまで春が近づいている気配がする。
気持ちがいいので日曜日のお昼は外(そと)食を楽しんだが、道路を走る車がやけにスピードダウンしていたことを考えると、「この時期になんと酔狂な...。アホじゃなかろうか、いやアホに違いない」と呆れていたのだろう。

前回に谷の融水が訳の判らない状況で止まってしまったと書いた。
今回一番最初に取り掛かったのが、700mのパイプを辿って原因を究明すること。
結局判明せず、もっと暖かくなってから各ジョイントを分解して調査するという大事になった。

どうして水が来たのか?? ところが、である。
訪れた友人夫婦を送りがてら深夜外に出ると、止まった融水を気に掛けていた友人が
「アレッ、何の音? 水じゃない!?」
なんとなんと、一滴も届いていなかった水が勢いよく音を立てて流れているではないか。
驚いたの何の、まるで狐につままれたようである。
水が再び流れ出したということは幸いだが、それにしても、ほんとうに不思議な出来事だった。
原因を深く追求しないところがいい加減な性分だと思うけれど、まぁ、よしとしておこうじゃないか。

敷地内の見回りでは、異常に増えているカモシカの溜めグソ(すみません。、そう呼ぶそうなので)が気に掛かった。
食害を受けているのか、今年もフキノトウは少ないようだ。
フキノトウ味噌と山椒味噌用に味噌を10キロも買い込んであるのだが、早手回しだったか。
散歩しながらkiiさんからの願望が二つ。キノコを数種植菌してみたいことと、蕗を植えて欲しいと。
キノコはずっと言い暮らしていたから理解できるけれど、フキは山蕗でないものをと急に言われてもね。
kiiさんの好きなものの一つが蕗と油揚げの煮物で、それには山蕗はあまり適さない。
あの穴の開いたシャキシャキした蕗を本格的に育ててみたいという。
どちらかというとその畑蕗(山の蕗に対してこんな言葉があるのかどうかは知らないが)のほうが私たちは好きである。
また多用途なので育てることに依存はないが、そのためにはまず開墾をしなくてはならず、それが大変だ。
鹿&カモシカ対策もしっかり取らなくてはならないのでかなり手間ではあるけれど、秋田ブキ、愛知ブキなどを真剣に検討してみますか...。と言いつつ早や一面の蕗畑を思い描いているところがいかにも私らしい。
秋田ブキは寒地ほど大きくなるそうだが、野迫川辺りではどうなるものかとそんなことも面白そうである。
ゴミと埃にまみれて。 日曜の作業は、中心まで張り上げた天井の反対部分の片付けから始まった。
不要な材料が積み上げられていたので、これを整理するのに二人ががりで半日仕事。
しかし慣れない作業は後に堪える。下に居て重い板材の受け取りを引き受けたのだが、肩や腕がバンバンになり、負け惜しみにも心地よい疲労、運動不足解消とはいえない。
「参った」とは口が裂けても言いたくない私は、「その日のうちに痛みが出るんだから、まだまだ肉体年齢は若いよねぇ。」と相変わらずの減らず口を叩いている。
天井板をなぜ続けて張っていかないかというと、両端から張り、切り物は下部から見えない中心の桁の裏部分に収めて逃げようという算段なのである。
反対部分の張り出しが始まった。 反対側からの張り出しが始まった。
段取りよく進み出したところをみると、半分を完了させた「慣れ」だろうか。
上から下ろした板材などで足の踏み場がなくなり、脚立が立てられずに、なんとも危なっかしい格好で作業するkiiさんを恐々見上げる。
「床までは2950mm、落ちたら痛いよ。助けてあげないからね!!」
かなり脅しておいたから、本人も注意することでしょう。
外はポカポカ陽気。ストーブを消しドアを開け放って作業をする。kiiさんの衣服も一枚脱ぎ、二枚脱ぎと軽くなっていく。
これからが手間取る箇所なのだ。 「天井張り完成までの所用日数はあと三日ぐらいかな?」と、スケジュール帳を頭に浮かべながら私。
3月から4月にかけては、樹木の移植をはじめとして、庭の諸々の力仕事が待っているのだ。
 「。。。ウ〜〜ン」と唸るkiiさんに涼しい顔で「引っ張りだこだね」
このところ、所用で土曜日の午後に野迫川入りすることが多かったが、それではどうしても作業効率が悪くなる。
だが、早朝に野迫川入りするとなると、梅本豆腐店で油揚げや豆腐を買い求められず、またJAで新鮮野菜も仕入れられなくなり、これもまた非常に辛いことなのである。さぁて、困った...。


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