週末開拓民奮戦記

ハンドカット&セルフビルドのログハウス(29)

2003年2月

2月25〜26日
二週続きで週末が仕事に掛かってしまったので、振り替えて野迫川に行ってきた。
天気予報とニラメッコ、天候が落着いているはずの二日間を選んで行ったのだが、山の天気は気まぐれである。
村の長老達の天気予報のほうが当たっているような気がする。
野迫川は山陰地方の天気を参考にすると比較的当たるそうなのである。
「この場所は雲があっちから湧いてくると確実に雨になるよ。」とか何とも判りやすい。

降りそうで何とかもっている天気だが、思い切ってログのシートを外す。
一度外すと再び掛け直すのに時間が掛かるため、降ってきても間に合わない。何しろ天候次第なのである。
少しずつ張り上がっていくのが嬉しい!! ログ作業は久しぶりなので、手順がスムーズではない
のか、「ウーン、進まないや。」とkiiさん。
「この作業は一人で充分だからあんさんの仕事をして
いいよ。」との言葉に甘えて、私は庭仕事に取り組み
kiiさんは黙々と天井板を張り続ける。

庭仕事の手を休めて、時々そっと覗きに行く。

少しずつ張り上がっていくのを見ながら、私の気持は
弾む。
ログ造りをしている時のkiiさんの表情は、いつも
とっても明るい。
バールでこじながらホンザネを収める。 自家製の板だから完璧な形状ばかりではない。
反りも激しいので、ホンザネが簡単に収まらない。
小さなバール(釘抜き)の柄部分を利用してこじ入れな
がらり収めこんでいく。
この作業に一番時間が掛かっているようだ。
窓から出入り。 天井部分が閉ざされてきたので、窓から出入り。
一枚張るたびに出たり入ったりを繰り返す。

だんだん足が上がらなくなるけれど、嬉しい痛み!!
「ワアッ、遂にあと一枚で内部が完了だあ。」 「ワアッ、遂にあと一枚で内部が完了だあ。」
総監督はお気楽である。
作業するkiiさんのしんどさをよそに、結果を確認するだけ。

「いい匂いだねえ...。」
胸いっぱいに製材した杉の香りを吸い込む。
様々な思いが溢れて、ふっと目頭が熱くなる。

「こんなことでウルウルしていたら、これから先ずうっとウルウル
しっぱなしだよ。」
笑い飛ばすkiiさんだが、彼こそ感慨深いものがあったに違いない。
何しろ長い道のりだったから...。
ついに片面の内部が張り上がった。 26日の夕刻、北側の軒天は残ったが、内部との境目までが完了。
昼食を取るのもそこそこで休憩もせず、ひたすら作業に取り組んだ。

平日の作業は捗り方が違う。
アポナシの来客がなく、作業を中断させられることがないから...。
だからと言って平日に再々行ける訳でもなく、こんな日は貴重である。

休日のアポナシの来客はほんとうに苦手である。
「元気にしてた?」「捗ってる?」
日中の一番リズムが乗ってきた時に限って、多いのである。
寄ってくださるのは嬉しいけれど、作業はまったく捗らなくなる。
週末開拓民にとってはつらい部分でもある。
養生のブルーシートを張り直し、捲りあ
がらないように木片で留め付ける。
あいにく屋根全体を覆う大きさのシート
はないので、今までも二枚のシートを
使って養生していたのだが、横木で留
め付けていたのでその部分から雨が染
みて漏れていた。水の抜けがいいよう
に今度は留め木を縦に張る。
我々も学習しているのだ。
「さて、これで完璧だ!!」
kiiさんの自信たっぷりの言葉。
「完璧かな?完璧だといいな...。」
内心ふっと思ったけれど、勿論口には
出さない...。

養生作業
養生作業をする

2月9〜10日
水に祟られた週末だった。

野迫川倶楽部に着いた途端に異変に気付いた。 「アッ、水が止まっている!!」
谷からの取水は年中流れ続けているのだが、最近取水地付近の取水パイプが土砂で埋まり、何度となく断水
が起きるようになっている。
水が止まると700メートルを引いて来ている途中の谷でパイプ内部が何箇所も凍りつき、春まで水が来ない
かなと、その度にヒヤッとさせられている。
春になるのを待って土砂を撤去するなどして、再工事を余儀なくされているのだが...。
「まずは水源地点検行をしようか...。」と車を走らせ
かけて吃驚仰天。
倶楽部に引き込む最後のジョイントが外れて、流れる水
は道路の高い壁を濡らし写真の如くなのである。
高度6メートル。
残念ながら上から手が届く位置ではないために、一番
難儀な場所なのである。


午前中を費やし、水が再びほとばしる頃には 開拓民
夫婦は疲れ果てて座り込む。

翌朝、再び何か変なのである。「kiiさん、水が細すぎるけれど...。」
水源地を点検に行ってパイプを掃除するなどして処置をしてきたが、数時間を経過しても水が来ない。
取りあえずは湧き水が健在なので心配はいらないのだが、「何だかおかしいよね。」
kiiさんは「そのうち来るよ。」と気楽な返事。
お昼も近くなって、「やっぱり変じゃない??」とヤブこぎ覚悟で徒歩で点検に出かける。
何と、昨日外れていたジョイントの一つ向こうのジョイントが外れているではないか。
今回外れていたジョイントの二ケ所が、6メートルほどの高度を這わせている。
一番無理がかかる場所なので、多少の懸念はあったのだが...。
町の生活からは想像も出来ないことが頻繁に起こるのが、奥深い山暮らしということかと、妙に納得して頷い
た私たちだった。

まとまった作業をするには時間が中途半端になってしまい、天気予報もうまく当たらなかったのか、今にも降り
出しそうな厚い雲が空を覆う。

今回の週末は水に振り回され、山の斜面にはびこるハゼやススキを始末し、将来に向けての全体図を描き、
台所など水回りの図面を完成させて終った。

「覚書」
*山の斜面ではお茶の木を20本ほど発見した。
*いよいよ野迫川倶楽部にもカモシカがご登場となった。
*花狂いの私としたことが迂闊にも今まで気付かなかったのだが、ウツギの木々の間に桃色ナツツバキの苗木
 を発見した。苗木と言っても2.5mの高さがあり親木を購入した時よりはるかに大きくて太い。
 実生なのだが、なぜ今まで気付かなかったのだろう...。 素晴らしい容姿に惚れ惚れと眺めいる。

2月1〜2日
雪は少ないが、野迫川も凍てついている。
足場丸太にへばりついた霧氷が融けだすのは、晴れた日でも昼近く...。
危なくて足場の上の作業はできそうにない。高度がさほどではなかった今までならそれでも作業を決行したが、
流石に屋根の関わりになると無理はできない。
まして、一日中寒暖計が0度以下をさまよっている時などは、もってのほかである。

だが、そんな時でも開拓民は遊んでなどいられない。作業は山積なのである。
あれも、これもと、しなければならないことは増えるばかりである。
山暮らしはほんとうに忙しい...。
杉枝の山がたくさん!! ←杉枝の山
こんな山が野迫川倶楽部内に20ぐらいできるのではな
いかと思う。
私の背丈の倍ほどもある枝は、引きずって集めるのにも
汗だくになる。
瞬く間にこんな山が幾つもできるのである。

ここは洋ナシや梅を定植する予定。
育樹エリアの果樹たちが、移植が遅れて大きく育ってし
まった。この3月の移植が限度だろう。
早く片付けて移してやらなければと、少しばかり必死に
なっている。
凍てている時は、ひたすら枝を燃やす。 晴れた暖かな日はログに取り組み、凍て付いた雪の日
は杉枝を燃やしている。
安全性を考えて、雪のある日以外はこの作業をしない
ので、雪が積るのを待ちわびていたのである。

とにかく少しでも片付けようと、ひたすら枝を燃やす。
この冬中には終りそうもない...。
身体中燻製になりながら、この作業にも追われてい
る。

まだまったく手を付けていない山の斜面など、杉枝の
他にいばらや倒木で足の踏み場もない。
できるだけ目を背けている。
  
                                                                                  
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