週末開拓民奮戦記
ハンドカット&セルフビルドのログハウス(49)
2004年7月(1) 町は蒸し暑くて不快指数もウナギのぼりだが、山に向かう行程は緑の風を受けて心地よい。 山の夜の涼しさは宝物だと、この時期になるとしみじみ思う。 北海道生まれの私は、何十年暮らしても大阪のうだるような暑さには慣れることができなかった。 野迫川村は日中の日向は暑いが、木陰に入ると涼風が吹き抜ける。 日が落ちると気温は急降下し、一日の温度差に吃驚させられる。 窓を締め切り毛布を被って寝る山の様子は、熱帯夜の大阪にいて想像するだけで汗が滴る。
深夜(だと思っていた。)手洗いに起きる。 寝床に戻って瀬音に耳を傾ける。寝られない。 明日の天候がふっと気になり、ロフトからベランダへと出る。 月は既に山の向こうに隠れ、庭の木々が黒々と浮かんでいる。 作業の段取りなどを考えながらログ前の白樺に目をやる。 白樺の葉にピカリと微かに光るものがあり、「なんだろう...。」と目を凝らす。 露が電灯にでも反射したんだろう。 何気なくその横にある小さな池、そして裏山へと目を転じて私は仰天した。 「kiiさん、早く、早く、起きて!!」 半分寝ぼけながら「何時だと思ってるの?午前三時に人を起こすかなぁ。」「見て、見て、あそこ...。」 指差す方に目をやったkiiさんが絶叫する。「な、なんだ?コレは...。」 ポカンとしたkiiさんの顔を見ながら、私は「起こしてもらってよかったでしょう?」と笑みを洩らす。 池から裏山にかけて、無数のホタルが乱舞している...。キラキラと山が輝いているのだ。 今までは倶楽部前の道を隔てた渓流のホタルを楽しんできたが、倶楽部の敷地内にも遊びに立ち寄るホタルが居て、それが嬉しくて狂喜したものだった。 それはあくまでも「フラリ、飛んで来た」であって、でもこれは違う。自分の縄張りの如くに「ここで飛んでいる」なのである。 まさかこんな所に居る訳がないとそう思い込んでいたから、私たちも吃驚仰天したのである。 言葉もなく、ただただ見惚れる二人だった。 午前三時にホタルの饗宴を見ている私たちを他人が見たら、さぞ酔狂だと呆れるに違いない。 気温がまた下がったのか、ブルッとして心残りだが布団に戻る。 目を閉じても、今見た光景が焼き付いていて瞼の裏でもホタルが舞い、なかなか寝られなかった。 翌日は午前中が村のクリーン作戦。草刈り奉仕である。 草刈り機持参で参加したkiiさんは、暑さと寝不足でバテ気味であった。 |