週末開拓民奮戦記

ハンドカット&セルフビルドのログハウス(49)

2004年7月(2)9日〜11日
猛暑の大阪を脱出して金曜の夜に野迫川入りした。
何しろ日中は30度を軽く超え、熱帯夜も一週間続いている。
空気がじっとりとまとわりつくような湿気を帯びていて、不快指数は上がるばかり。
同じ30度でも山のものとはまったく異なり、「うだるような...。」といかにも暑い。
山は木陰に入るだけでひんやりと涼風が吹く。

夜だけでもせめて、エアコンを入れずに眠りたい...。
その思いに駆られて、仕事を終えてバタバタと、中年は野迫川を目指す。
今夜は簡単バーベキュー 到着したら荷物を降ろし風呂を沸かす。
沸くまでの30分の間に手早く調理を済ませるが、今夜は簡単バーベキュー。作り置きのタレに三元豚のスペアリブを漬け込み、ジャガイモやとうきびを茹で、畑からチマサンチュとミニトマト、キュウリを摘んでサラダにする。二人で手分けするので用意は早い。
ひと風呂浴びたら冷蔵庫から冷えたワインを出して、遅い夕餉である。
夜は窓を閉めて毛布のお世話になって寝る。汗一つ流れず、「あ〜、極楽だねぇ。」
一週間の寝不足をすっかり解消するほど、グッスリ眠らせてもらった。

ホゾ穴も開いて、柱&梁作り完了 目覚めよし。
今週に向けて張り切っていたkiiさんだったが、ドジをして右腕を打ち身。
きつい作業は中止して来週に備える事にする。
成果が目立たない柱&梁作りはやっと終盤。
ホゾ穴開けも完了して一息をついたところだった。
kiiさんにとっては、腕は痛いけれど恰好のお疲れ休みになる。
【この画像は大きくなります。】
積み上げられた柱&梁 完成して勢揃いした柱&梁。
積み上げられたところはなかなか壮観。
今、作業台には長い桁が二本乗っている。
その刻みが済んで、ログとリビングキッチンの接合点に細工をし、足場を組むのにどのくらいの時間を要するか...。
そして、その後にいよいよ一回目の組み上げが来る。

【この画像は大きくなります。】
10日の昼過ぎに知り合いのHさんご夫婦が来訪。
「今年のホタルはどう?」「ウーン、どうかなぁ...。もう終わりかもしれない。」
数%に期待して「ホタルを楽しみたい夕べ」と相成る。
鶏を調理するテルチャンとkiiさん 今夜のメニューはダッチオーブンで鶏の丸焼き。
H夫人テルちゃんとなにやら楽しげに話しながら、鶏のお腹にニンニクやハーブを詰め込むkiiさん。

Hさんは持参のサザエの殻割りに忙しい。
私はサイドメニュー作りにおおわらわ。
カボチャのサラダ、オカヒジキの白和え、海老の塩茹で、鶏レバーときんかんの煮付け...。
お待たせのD.O。旨味が凝縮している...。 用意が整いだした頃から雨、それもバケツをひっくり返したような降り。やむなく焚き火でのダッチは諦めてガスでチャレンジ。ガスは初めてなので勝手が悪そうだ。
待つこと二時間。やっと仕上がった...。
野菜の旨味が逃げないのでジャガイモやコーン、人参もタマネギもそれぞれが持つ本来の甘味がたっぷりで美味しい。
残った鶏や野菜はコトコト煮込んでもち米を入れ、中華風のお粥さんに...。クコの実とミツバを散らして彩りもよく、美味しかった。
【この画像は大きくなります。】
肝心のホタルだが、やはり川辺には数匹しか見られなかった。
6月の台風の影響か、今年のホタルは寂しかった。ピークはいつだったのか。
それにしても山を輝かしてくれたあのホタルは一体なんだったのだろう...。
今でも、あの光景を思い出して首を傾げている。



【皆様ご用心遊ばせ。】
ブヨに刺されてお岩さんになり、それがようやく治ってきた頃に発疹が出た。
一週間続いた町の暑さのせいでアセモが出たのかなと思いこんでいたけれど、一向に発疹と痒みが引かずついに皮膚科に行った。
ひと目みた先生イワク「庭仕事とかしなかった?」
きょとんとする私に「これ虫刺されだよ。チャドクガだな...。」
ドクガの恐さは常々聞き知っていたから、kiiさんには充分の注意を促していたのだけれど、当の私がいつ刺されたのか見当もつかない。 町で罹患したものかどうかもわからない。
山の庭はツバキ、茶、サクラ系など特に注意して点検しているのだが、見逃したのか...。
毛虫は滅多に見かけたことはないが、枝ごと切り取り焼却している。
「鳥が増えて自然淘汰がうまくいっていると思っていたけれどが、鳥さん、サボったのかな。」の声に、「そりゃあ毒毛虫なんて鳥たちだって敬遠するよ。」とkiiさん。

ドクガの幼虫(毛虫)は体表面を覆っている毛そのものが有毒で、殺虫しても毒針毛の毒は消えない。
一匹の保有する毒針毛は想像を絶する数で、
毛虫の残骸から飛び散った毛に触れただけでも毒に当たるそうだから始末に負えない。
抜け飛んだ毛がタオルに付着し、そのタオルで汗を拭いたために身体に広がるケースもあるそうな。
卵も成虫もすべて毒の固まり。その毒性は死しても容易に消えないなんて、なんとも恐ろしい。
初体験のドクガの痒みだったが、このぐらいで済んで、いい教訓になったと実感している。

ドクガとイラガはこの季節に発生が多いようで、皆様どうぞご用心ください。

2004年7月(1)
町は蒸し暑くて不快指数もウナギのぼりだが、山に向かう行程は緑の風を受けて心地よい。

山の夜の涼しさは宝物だと、この時期になるとしみじみ思う。
北海道生まれの私は、何十年暮らしても大阪のうだるような暑さには慣れることができなかった。
野迫川村は日中の日向は暑いが、木陰に入ると涼風が吹き抜ける。
日が落ちると気温は急降下し、一日の温度差に吃驚させられる。
窓を締め切り毛布を被って寝る山の様子は、熱帯夜の大阪にいて想像するだけで汗が滴る。
柱&梁の墨付けをする。 日が射して暑い...。天気予報はハズレ。
このところ雨が多かったから、このハズレは嬉しい。
汗を流しながら柱&梁の墨付けをするkiiさん。

私は果てなき草取りに精を出す。



【この画像は大きくなります。】
柱&梁の刻みをしている。 柱&梁の刻みをしている。

この刻みが終ると、桁を二本作る。
それができ次第、一回目の組み上げをする予定。
悪天候や諸々の所用が重なり、思うようには進んでいないけれど、それでも少しずつは前進している。

【この画像は大きくなります。】

風呂釜を設置する 風呂ハウスは、釜を設置し試運転もバッチリ。
ガス工事はまったくの素人のkiiさん。
慣れない作業には、私はかなり不安だったのだが...。

やっと風呂に入れることになった。
作業のあとに汗を流せるのはほんとうに嬉しいものだ。
闇の中にポッと点った灯りに、「なかなかいい。」とひとりごつ。
スノコと椅子を手作りする ホームセンターを何軒か回り、風呂マットや風呂椅子の、イメージと大きさと色が気に入らずに決めかねている私に、「仕方がないなぁ。作るか...。」とkiiさんが諦めの言葉を洩らす。
「待ってました、そのひと言を!!」
私は心の内で叫ぶ。
「作ろう」と簡単に口にできないほど、お互いに沢山の案件を抱えているから、手を取られることがつらいのだけれど...。
浴室内にも脱衣場にもスノコが入り、小さな椅子が置かれた風呂ハウスは、木の香が漂ってなかなか快適である。

【この画像は大きくなります。】
汗を流してサッパリした後は、いつものようにビール片手に二人で夕食作り。
今夜の献立はチラシ寿司にどて焼き、焼き茄子などなど 今夜は五目ちらし寿司。
具は鮭と倶楽部で調達した山蕗、北陸の友が送ってくれたネマガリダケ、キュウリや炒り卵、お気に入りのモミワカメをパラパラ。
お昼からコトコト煮たどて焼きには、刻みネギと唐辛子を添える。
焼き茄子にはおろしショウガと鰹節をたっぷり...。
鰹節は志摩半島のかくすけ屋さんのもの。
削りたての鰹節が味濃く、香り高い。
自家製のヌカ漬けも忘れない。
川辺をチラリと見やり、ホタルの登場を心待ちしながら舌鼓を打つ。
お腹がくちくなると、オンザロックを片手にぶらり蛍狩り。

月夜のせいか、それとも先の台風が影響しているのか、ホタルの飛びはまだ少ない。
「もう諦めなさいよ。」と言われながら、なおも未練がましくウロウロする私だった。

深夜(だと思っていた。)手洗いに起きる。
寝床に戻って瀬音に耳を傾ける。寝られない。
明日の天候がふっと気になり、ロフトからベランダへと出る。
月は既に山の向こうに隠れ、庭の木々が黒々と浮かんでいる。
作業の段取りなどを考えながらログ前の白樺に目をやる。
白樺の葉にピカリと微かに光るものがあり、「なんだろう...。」と目を凝らす。
露が電灯にでも反射したんだろう。
何気なくその横にある小さな池、そして裏山へと目を転じて私は仰天した。
「kiiさん、早く、早く、起きて
半分寝ぼけながら「何時だと思ってるの?午前三時に人を起こすかなぁ。」「見て、見て、あそこ...。」
指差す方に目をやったkiiさんが絶叫する。「な、なんだ?コレは...。」
ポカンとしたkiiさんの顔を見ながら、私は「起こしてもらってよかったでしょう?」と笑みを洩らす。

池から裏山にかけて、無数のホタルが乱舞している...。キラキラと山が輝いているのだ。
今までは倶楽部前の道を隔てた渓流のホタルを楽しんできたが、倶楽部の敷地内にも遊びに立ち寄るホタルが居て、それが嬉しくて狂喜したものだった。
それはあくまでも「フラリ、飛んで来た」であって、でもこれは違う。自分の縄張りの如くに「ここで飛んでいる」なのである。
まさかこんな所に居る訳がないとそう思い込んでいたから、私たちも吃驚仰天したのである。
言葉もなく、ただただ見惚れる二人だった。
午前三時にホタルの饗宴を見ている私たちを他人が見たら、さぞ酔狂だと呆れるに違いない。

気温がまた下がったのか、ブルッとして心残りだが布団に戻る。
目を閉じても、今見た光景が焼き付いていて瞼の裏でもホタルが舞い、なかなか寝られなかった。

翌日は午前中が村のクリーン作戦。草刈り奉仕である。
草刈り機持参で参加したkiiさんは、暑さと寝不足でバテ気味であった。


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