週末開拓民奮戦記

ハンドカット&セルフビルドのログハウス(51)

【画像は大きくなります。】

2004年8月6日夜〜8日  
金曜の夜、仕事が終ってから野迫川に直行した。
最近は町に行く、山に帰るという意識がますます強い...。
町での時間、私は妙に落着かない。居心地の悪さばかりを感じている。

棟上げの第一期工事に向けて、このところかなり緊張している。
何しろ、卜伝君と電動ウィンチの力を借りるものの、二人でやってのけようという目論見なのである。
「二人で大丈夫だよ。マイペースでやろうよ。」
kiiさんはあっさりと言ってのけるが、私はどうなることかとかなり不安である。
ログウォールとの接合部分 ←ログとの接合部分の細工。(この切り込み部分にサネが入る。)
ログウォールの接合部分やログ側の桁組み部分の切り込みが完了。
桁組み部分では、かなり頭を悩ませた上に作業がしにくく、苦労をしていたようだ。

この断面の切込みがログの中心線である。
「なんと、暴れ杉もいいところだね。」私は呆れて眺める。
手入れされていない地場の材を使ったログは、確かに素朴な味わいがあるけれど、サイズもマチマチでその歪みやテーパーにはさぞてこずったことだろう。
愛しそうに木肌に手を置くkiiさんの表情には、そんなカケラもないが...。
素人が、一冊の本を片手に試行錯誤してきた、ログ造りの長い軌跡を偲んで、私は胸を熱くしている。

土曜日は奈良のT君が、不要のコンテナをばらして2×12材を運んできてくれた。
いつものことながら、この差し入れはほんとうに有り難く感謝している。
ブルーベリー畑に防鳥ネットを張る 折角来てくれたのだからと、棟上げ準備は中断して、ブルーベリー畑の防鳥ネット張りを手伝ってもらう。
今年のブルーベリーは実成りが多い。
無農薬安心印の美味しさを認知されてきたのか鳥たちが増え、虎視眈々と狙っている。新しい鳥を見るのは嬉しいけれど、果実を、それもブルーベリーを狙われるのは辛い。
ブルーベリーはスズメバチも大好物のようで、熟した頃には盛んに飛来する。
スズメバチといえば...。
ブルーベリー畑の横には以前に日本ミツバチが巣を作っていたワイン樽が置いてあるのだが、そこに黄色スズメバチが出入りしている。見つけたkiiさんが仰天して叫んだ。「keiさん、大変だぁ!!」
土曜の朝はスズメバチ退治に数時間を要した。
一週間前にはなかったので巣がまだ小さかったことと、ワイン樽の穴を出入り口にしていたのが幸いした。アブ・ハチキラーをたっぷり噴き込み、入口をガムテープで素早く止め、細かいステンの網をタッカーで貼る。
はたらき蜂が帰巣するのも待ち構えては捕まえたが、スズメバチは行動も激しいけれどほんとうに不気味な面相をしている。
燻製用にと貰ってきたワイン樽だった。
燻製は石窯構想で対応できそうなので、ワイン樽はやがては切断してガーデニングにでも利用しようと思っている。
足場を組んでいる 棟上げのための足場を組む。
リビングキッチンは天井高が293cmほどになる。
できるだけ高くして欲しいのが私の切なる希望だった。
従って足場も高く、私はかなりへっぴり腰でウロウロしている。
現場を見たT君から、夜TELが入る。
「本番は盆休でしょ。一泊だけだけど夫婦で手伝いに行くから。」
「二人で大丈夫よ。」は、やせ我慢と写ったのかも。
好意は有り難く頂戴して、一番しんどい作業をプレゼントしよう...。
きっと喜んでくれるに違いない。
彼等は訪れるといつも気軽に動いてくれるので助かっているが、夫婦共に美味しいお酒を呑めるいい相棒でもあり楽しみにしている。
この日は午後3時半から2時間、たっぷりと稲光と雷の饗宴を堪能させて貰った。
山の雷は音が強烈で苦手である。しかもすぐそばにドンガラ、ドンガラ、落雷する。
「光って一秒、近かったね。」とkiiさんはわざと脅すのだ。
「せんたくかあちゃん」のようにゆったりと構えて、BGMのように雷鳴を聞き流せるようには、なかなか慣れないものだ。

8日朝、電動ウィンチを設置し、足場に滑車を取り付ける。
いよいよ裏面の柱と桁(ポスト&ビーム)を組み込む作業が始まる。
卜伝君と電動ウィンチと6個の滑車を駆使して7mの桁を上げる 卜伝君と電動ウィンチと6個の滑車を駆使して7mの桁を上げる。

kiiさんには、ユニックがなくても、この方法でログの棟上げをこなしてきた実績がある。
頭の中には手順が描かれているようだが、私はかなりチンプンカンプンで、言われるままに動くだけである。
桁とログウォールを繋ぐ 桁をログウォールに組み込む作業には手間取った。
ログウォールの桁下にリビングキッチン側の桁をはめ込むのだが、
またその下に柱をはめ込むという、本来の逆の工程になっているので、素人にとっては余計に複雑なのである。
「それもこれもkeiさんが勝手に70cmも広げるからだよ。ログと同じ奥行きだったらもっとスムーズなのに。」とkiiさんはぼやく。
「でもやりがいがあるでしょ!!」
ようやくのこと、うまくはまった時には二人で歓声を上げる。
一本目の柱を組み込む。 まずは一番複雑な部分への柱の組み込み。
ここでアクシデント発生。掛矢(カケヤ)で叩き込むがスッキリと入らない。
どうしても20mmほど残る...。
焦りで冷や汗をかきながら「おかしいなぁ...。」を繰り返していたkiiさん。
「アッ、そうだ。入りにくいと思って、ここだけホゾ穴を浅くしたんだった。」
ホゾ穴は
70ミリに掘ってあるのだが、この箇所だけ50mmにしたのだそうな。
ホゾは他と同じく70mmにしてあるから、入らないのが道理である。
原因が判ればどうということはないが、もう一度外して20mmカットし、最初からやり直しである。
一番面倒な部分を組み込んで、ホッと一息。ここでコーヒーを淹れて小休止。
時計を見ると11時。早めの昼ご飯にしようか...。
という訳で「ゴーヤチャンプルーやキュウリの糠漬け、ミョウガご飯」で簡単な昼食を取り休憩にする。
滑車を付け替える 午後の部は滑車の付け替えから。
組み込む柱の位置に滑車を取り付け、ウィンチで引き上げるのだ。
面倒っぽい作業だが、kiiさんは慣れたもの。
沢山の杉を伐採する際、素人がいかに安全確実に作業するかを考え滑車を駆使しだしたkiiさんだが、この方法がログウォールを一人で積み上げる、あるいはログの棟を上げる際の省力化に大いに役立っているのである。
組み込んだ柱を掛矢で打ち込む 慣れてきて、現場まで柱を運び込む足取りも軽く、息もピッタリ。
「いつもこんなだったらいいのにね。」などと軽口まで飛び出す。
午前に難しい部分をこなしたおかげか、
午後の柱組三本はとてもスムーズに進んだ。

組み込んだ柱をkiiさんが掛矢で打ち込む。
カケヤの音が周囲の山々に響く時は、いつも嬉しくてワクワクする。
本日の作業予定は完了しました。 この日、桁を一本、柱を四本組み込んで予定終了。
流石に壮観で、しばし声もなく眺めいる。
kiiさんは墨付けや刻みがうまくいって安堵し、私は出来上がり図を頭に浮かべてと、それぞれ思いは異なるけれど...。


風呂ハウスにて汗を流し、サッパリして帰路につく頃はもう薄暮。
かなり疲れてはいたが、達成感が勝り、それは心地よい疲労感であった。
2日後
太い丸太を運び、支え、無意識のうちに私はかなり緊張していたらしい。
節々がビシバシいう。2日後というのは問題だぞとkiiさんが笑う。
達成感も爽快感もまた節々の痛みも、身体を動かしてこそ得られるものだと再確認している。


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