週末開拓民奮戦記

ハンドカット&セルフビルドのログハウス(56)

【一部画像は大きな画像にリンクしています。】

2004年11月
珍しく仕事が忙しい一ヶ月で、山の作業はまったく進まなかった。
忙しいのは嬉しいけれど、雪が降るまでに屋根を完成させたいという望みは、まったく潰えてしまった。
リビングキッチンの屋根の下地だけは、何とか終らせて年を越したいと思っている。
先に道具類をいただいた老大工さんからTELがあり、釘類を引き取りに伺った。これも、これもと出してくださって、またまた道具類が増え、kiiさんはニコニコ顔である。
しかし男というものは、概して工具・道具類が好きなものなのか。
「keiさんの陶器好き・ステンレス好きと大して変わりはないんじゃないの?」
とkiiさんは言うけれど、焼き物やステンのニンニク絞りやザルを見て、相好を崩す図というのは私にはないことだ。
今回は釘類の他にドアクローザーやドアノブ、タッカーや電動ドライバー(少し力が弱いけれど、小さめのビス締めには最適だそうな。私向きかも)
これから先の造作にかなり頻繁に使うだろうと、購入を考えていた大きめの釘打ち機、それ用の釘を段ボールに一箱分。
いただいた道具類
これはほんとうに嬉しそうだった。
電動カンナの刃を6揃い、溝ホリはまた一台増えた。
溝ホリは、何種類かの必要な寸法にあらかじめ合わせておけると喜んでいる。
私はといえば、しっかり研ぎ込まれた使い勝手抜群の植木剪定用の大鋏を二丁戴き、切れ味にニンマリしている。
「また整理して出しておくわナ。」
凝り性だった老大工さんの、道具を愛しげに撫でながらの昔語りをお聞きするのも楽しいひと時である。
シシ殿、お見事!! 日帰りで様子を見に行くだけの山行きが続いていたけれど、その間のイノシシの暴挙は目に余るものがある。
庭の半分以上とミョウガや三つ葉の畑は相当ひどく荒らされて、回復不能の部分も多い。
クリンソウや好きな山野草などを集めたエリアが、特に手酷いダメージを受けた。
敷地内道路は削り取られ、ログ下のこの池は頼まれもしない拡張工事まで引き受けてくれた。
水際にあった丸太が跳ね飛ばされてご覧のとおり。しかしまぁ、凄い力である。


この池の端に、真夜中、イノシシが居た。
トイレに起きた折、カサッと落ち葉を踏む微かな音を聞いたような気がして、私は暗闇に目を凝らした。
気のせいかなと思いながら、再び暗闇に目を走らせる。
「なんだろう、あの灰色っぽく見えるのは...。まさか、エッ、イノシシ!?」
「kiiちゃん、いるよ、いる!!」その距離、僅か5m...。
私の鋭い声に吃驚したイノシシは、脱兎の如く、イヤ、脱猪の如く逃げ出した。
イノシシの声を聞いたら脅かそうと用意していた、小石や懐中電灯に手を伸ばすことも忘れるほど、咄嗟の出来事にこちらも動転している。
まったく気配を感じなかったというkiiさんは、何故わかったのか、げに恐ろしきは女子の勘と気味悪げである。
翌日、親しいKさんが訪れたが、「昨晩、うちの畑でもイノシシが宴会していたよ。ブハブハとそれは賑やかだった。」とのこと。大声で威嚇したそうだけれど、同じ山並みだから、こっちに出ているのと同じ系列かもしれないと見解が一致する。

この宿泊の際、木酢液をたっぷり地面に染み込ませて帰阪したが、今回行ってみると、不思議なことに散布した部分は荒らされていないのである。
庭部分にすべて散布するには、20リットル缶が何本必要かと想像を絶する。
ここは掘らないでねと念じながら散布したのだが、その部分だけは避けて通っている。
学習するまでの束の間だろうが、効果はあるのかもしれない。
その代わりか、散布していない場所の荒しっぷりは、怒りに任せてというほどのひどい有様である。
爆弾が落ちたかと思うほどの凄まじさに、kiiさんと二人、呆れ果てて見やる。
山際や谷などが特に激しい。 ツルニンジンの存亡や如何に、である。

イノシシの後始末は疲れる作業である。建設的な楽しい作業とは異なり、空しさだけが残る。
空しいけれど片付けなければならないのが辛い。
怒りを溜めていたけれど、なんだか急に馬鹿らしくなってきて、「考えてみたら、固まった土に風を通してくれたんだよね。」とのkiiさんの言葉に頷いている。
「私は忙しいのですよ。差し迫った作業が多いんですから。」というkiiさんの抵抗を無視して「買うと高いし、気に入ったものはなかなかないもの。手作りに勝るものなしよ。寸法どおりに作ってね。」
「買うと高い。」か「気に入ったものがない。」のどちらに反応したのかは定かでないが、有り合せの板切れで作って貰ったのがコレ。
DVDレコーダーとソフトを入れるためのこの棚は、使いよく、既製品にない味がある。
山の長い夜は読書と映画鑑賞を...。
手作りっていいね。
年末年始を山で過ごすための準備が着々である。
垂木作り kiiさんは時間を見つけては、コツコツと垂木作りを続けている。
出来上がった垂木は、ソリを防止するためにしっかり括られて出番を待つ。
垂木のソリを防ぐために括っている
今回、リビングキッチン部分の垂木が出来上がった。

自分ではどうにも作れない金物やコンパネ、屋根材などは購入するが、その他の木に関するものはできる限り自家調達しようと考えている。
そのために掛かる時間や労力も大変なのだが、「地場の材で、自力で作る。」にとことん拘ってみたいと考えている。

次回は、コンパネを搬入して屋根の下地作りをする予定だが、落ちの天気予報を見ながら、どうかハズレておくれと祈っている。
出来上がった垂木

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