週末開拓民奮戦記

ハンドカット&セルフビルドのログハウス(57)

(一部画像は大きな画像とリンクしています。)
2004年12月(3)
「雪が降るまでには何とかキリをつけたい。」と祈る思いで迎えた最終の週末は、何とか天候ももち、足場組み、垂木、コンパネ貼りとヘトヘトになるまで動き回った。
北面の屋根の下地工事が完了して、これでいつ雪が降っても安心である。
カラーベストは春になってから貼る予定なのだが、それまでの間、リビングキッチンを養生するものが薄いブルーシートだけというのは、なんとも心細かったのである。
シートだけでは、雪の重みで何度落ちることかと想像するだけでゾッとしていた...。
それにしてもよく頑張ったと、完成した下地を見上げながら二人とも感無量だった。

凍てつかなくなったら屋根工事に取り掛かる。
コンパネの上にルーフィングを貼り、その上にカラーベストが乗る。
屋根が貼れたらずいぶん家らしくなることだろう。
LK北面の足場を組む 垂木を組み、コンパネを貼る ログとの接合部分が一番ややこしい 屋根の下地工事が完了した。もうこれで、雪が降っても大丈夫。
LK北面の足場を組む 垂木を組み
コンパネを貼る
ログとの接合部が
一番ややこしい
屋根の下地工事完成
雪が降っても大丈夫

LKの屋根裏は少し低いけれど、収納に使えるようにと考えている。
「また仕様変更ですか?断熱材の仕様も変ってくるのに。」とkiiさんは渋い顔をしているけれど、「小規模な変更は、よくあることです。」と私は小さくなり、そして開き直っている。

下地工事が終ってもゆっくりはしていられない。
最後の養生には多くの時間を取られた。
春までの三ヶ月の間に下地を濡らさないよう、厚手のブルーシートを張っていくのだが、滑るので要領よくいかないのである。
何とか張り終えた頃には、口を開ける気力も失せている二人だった。
それでもようやく完了してホッとしている。(踏ん張った脚の筋肉痛は、いまだに抜けていない...。)

今年の開拓民の作業はこれにて終了。
「来年こそ完成を見たいね。」「頑張ろうや...。」「前進あるのみだね
新年に向けて決意も新たな二人である。

2004年12月(2)
18日(土)が急遽休めることになり、慌しく食料や身の回り品を積み込んで野迫川へ。
今回こそ屋根の下地工事に着手したいと、二人ともやる気満々なのだが、昼ご飯を済ませた頃からまたもや雨になった。これではもう、仕方がない...。
危険を伴う足場の上の作業は雨が禁物である。
あっさりと諦めて映画鑑賞。最近はよく映画を観ている。それだけ雨が多いということなのだが...。
「映画ってほんとうにいいですね。」というあの台詞を、毎回思い浮かべる自分に苦笑しているが、ほんとうに映画はいい。
我が家の手持ちの映画は、クラシックな、名画とジャンル分けされるものが多いけれど、いい映画は、古くても今なお新鮮である。 新たな発見も楽しくて目を離せない。


早めの夕食は、初収穫のミズナで鍋にする。
ミズナと油揚げだけのシンプルな鍋だが、我が家の冬の定番。赤おろしと柚子こしょう、無農薬の柚子酢を添えていただく。シンプルな分、出汁には気を使っている。
今夜のメニューはミズナの鍋 翌日は、ミズナにタコとミックスビーンズのドライパックをプラスしてサラダにする。即席のドレッシングにはバルサミコ酢を落として...。
ボールいっぱいでも食べ切ってしまうほど美味しい。
(このガラス容器もヒャッキンで求めたもの。)
ミズナのサラダはおいしい!!
ミズナは苦いから嫌いだという御仁がいるが、それは美味しいミズナを食べたことがないからだと考えている。収穫したばかりの、それも無農薬のミズナは、実に美味しい。甘味さえ感じるのである。
こんなに美味しいのに偏見を持たれて可哀想だと、ミズナを見るたびに思う。
何がどうでもミズナだけは自分で育てたいのが私たちで、それほど好きな野菜なのである。
翌日はやっと晴れ模様になる。
kiiさんは、夜が明けるのを待ち兼ねて足場作りを始める。
その間に私は簡単な朝食の用意。朝ご飯を食べながら打ち合わせをする。
何としても、キリの付くところまでは終らせなくてはならない。
今日はノンストップ作業の厳しい一日になりそうだと予感する。

「サァ、やろうか!!」
足場を組み終わったkiiさんのかけ声に、気持を引き締める。
足場を作る
まずは垂木を止めつける作業から。
垂木は360mm間隔の予定だったが、コンパネの幅と雪の重量を考慮して、303mmスパンにした。
組みあがってくると足が引っ掛かりそうになり、何度か青くなる場面もあり。
「幾何学的な美しさだね。」などと楽しげに会話が出来たのはここまで。
垂木を組んでいる ←垂木を組んでいるところ

       垂木にコンパネを止めつけているkei。
防寒対策のダウンベストやオーバーズボンは汗ばむほどだったが、それは冷や汗だったのかも。
何しろ高度6m、コンパネは滑る...。

組んだ垂木にコンパネを貼る
上段はまだ足元が空いているからよいのだが、下段になると恐いのなんの...。
コンパネには一枚貼る度に滑り止めを付けるが、それを取り付けるのにも滑る。
顔は引き攣り歯を噛みしめて緊張の連続だった。
下段はkiiさんが足場から下部を止めつけ、私は上部を受け持つ共同作業。
テンポが上がってきた頃にはもう終り近く、作業というのは、どれもこれもそんなものかもしれない。
軒先に端隠しを付けている 鼻隠しを取り付けているkiiさん。

ログとの取り合い部分や鼻隠しにも少し手間取り、南面の下地作業が完了したのはもう薄暗くなってから。
「しかし、よくやったものだよね。」
足腰バリバリ、疲れ果てて声もかすれる二人だったが、達成感はとても大きかった。
軒が出来たリビングキッチンは、結構ダイナミックな様相である。
形が見えてくるのは嬉しいものだ。

「恐かったろう?屋根はもう願い下げでしょ?」とkiiさん。
「なかなか...。二人で作業すれば少しは早いでしょ?}
「屋根工事は危険だし、ログの屋根工事はもっと高所になるよ。」
「でも、頑張って登る...。」
南面の下地工事が完了した
まだ北側の下地工事が残っているが、怪我がないように、無事に完了させたいものである。

2004年12月(1)
当たらなくてもいい時ほど天気予報はよく当たるものだ。
土曜日、屋根の下地用のコンパネを40枚ほど搬入し、リビングキッチンの梁の上に上げたところで雨になった。
最初は静かに、やがて激しい風を伴う豪雨になる。
夜更けて風雨はますますきつさを増し、まるで台風のような荒れ模様だった。
倶楽部は北面を山に囲まれ、東南から南、そして西にかけてが開けている。
今回、風は南から吹き上げ、ログにとっては一番ダメージの大きい状況になった。
屋根工事がまだ出来ていないログは天井板の上の養生シートだけが頼りだが、それも吹き上げる風には弱い。
リビングキッチンの大規模拡張工事がなければ、屋根工事はとっくに済んでいたのだと、私は小さくなっている。
「雨音はショパンの調べ」だとか「雨だれこぞうちゃん♪」などと気楽なことを言い、「まるで落語に出てくる昔の長屋だね。」と雨漏りを受ける容器を並べて楽しんでいたのも束の間。
二人とも止まない雨にだんだん悲壮になってくる。
風を孕んだ帆のようにまくれあがったシートはログをも揺らし、野迫川丸は心細い一夜を明かしたのである。
雨は翌日になっても一向に止まず、「確か今日は上がると言っていたはずだ。」と天気予報を聞くが、野迫川ではその気配も見られない。
当たって欲しい時に当たらないのも予報なのだ。

雨は、一夜で軽く100mmを越えたのではと思えるほどの降りだったが、谷から池に流れ込む細流は、池を軽く越えて音を立てて流れ、下の庭までを沼地のようにしてしまった。
池から溢れた水は下の庭を沼地にしてしまった。
結局日曜日もほとんど雨...。
止むを得ず帰阪を一日延ばすことにする。とにかく屋根の養生をしなければ帰るに帰れない。
雨に降り込められて、溜め置いてあった映画をたくさん観ることができたが、こんな時の映画はあまり心楽しいものではない。
夜半にまたきつい風雨になり、再び雨だれの合奏と共に眠ることになる。
足場の補強をしているkiiさん 翌日は晴れ。
足場の乾くのも待てず、「滑るよ気をつけようね。」と声を掛け合いながら作業に取り掛かる。
まずは足場の補強から。
もう傷んでいる足場も数本あり、その組み替えに時間を取られる。
結局、足場の修復に2時過ぎまで掛かってしまう。
この画像は足場の修復工事をしているところ。
この後、劣化したこのシートを外し厚手の新しいシートを張り直した。
最終の細かい作業をすべて終えた頃には、もう薄暗くなっていた。
この日は疲れ果てて、ジョークどころか声も出ない二人だった。
慌しく終いごとをして野迫川を後にしたのは、日がとっぷりと暮れてから...。

帰路の車中でやっと落着いて言葉を交わす。
「足場の補強だけで一日掛かるかと思っていたけれど、思いのほか早く済んだよ。」
「そうなの? この分では今日も帰阪できないかと、途中で諦めの心境になったけれど...。」
「屋根工事用の足場の補強も出来たんだ。よかったなぁ。」
「今回はほんとうに来れていてよかったね。ログの中が水浸しになるところだった...。これで雨も雪も大丈夫?」
「多分ね...。keiさんの大事な本と映画が水浸しになったら、一生恨まれるよなぁ。」
次回の野迫川入り、私は少々の不安を抱えて、ということになりそうである。

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