週末開拓民奮戦記
ハンドカット&セルフビルドのログハウス(57)
2004年12月(2) 18日(土)が急遽休めることになり、慌しく食料や身の回り品を積み込んで野迫川へ。 今回こそ屋根の下地工事に着手したいと、二人ともやる気満々なのだが、昼ご飯を済ませた頃からまたもや雨になった。これではもう、仕方がない...。 危険を伴う足場の上の作業は雨が禁物である。 あっさりと諦めて映画鑑賞。最近はよく映画を観ている。それだけ雨が多いということなのだが...。 「映画ってほんとうにいいですね。」というあの台詞を、毎回思い浮かべる自分に苦笑しているが、ほんとうに映画はいい。 我が家の手持ちの映画は、クラシックな、名画とジャンル分けされるものが多いけれど、いい映画は、古くても今なお新鮮である。 新たな発見も楽しくて目を離せない。 早めの夕食は、初収穫のミズナで鍋にする。 ミズナと油揚げだけのシンプルな鍋だが、我が家の冬の定番。赤おろしと柚子こしょう、無農薬の柚子酢を添えていただく。シンプルな分、出汁には気を使っている。
こんなに美味しいのに偏見を持たれて可哀想だと、ミズナを見るたびに思う。 何がどうでもミズナだけは自分で育てたいのが私たちで、それほど好きな野菜なのである。
垂木は360mm間隔の予定だったが、コンパネの幅と雪の重量を考慮して、303mmスパンにした。 組みあがってくると足が引っ掛かりそうになり、何度か青くなる場面もあり。 「幾何学的な美しさだね。」などと楽しげに会話が出来たのはここまで。
コンパネには一枚貼る度に滑り止めを付けるが、それを取り付けるのにも滑る。 顔は引き攣り歯を噛みしめて緊張の連続だった。 下段はkiiさんが足場から下部を止めつけ、私は上部を受け持つ共同作業。 テンポが上がってきた頃にはもう終り近く、作業というのは、どれもこれもそんなものかもしれない。
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2004年12月(1) 当たらなくてもいい時ほど天気予報はよく当たるものだ。 土曜日、屋根の下地用のコンパネを40枚ほど搬入し、リビングキッチンの梁の上に上げたところで雨になった。 最初は静かに、やがて激しい風を伴う豪雨になる。 夜更けて風雨はますますきつさを増し、まるで台風のような荒れ模様だった。 倶楽部は北面を山に囲まれ、東南から南、そして西にかけてが開けている。 今回、風は南から吹き上げ、ログにとっては一番ダメージの大きい状況になった。 屋根工事がまだ出来ていないログは天井板の上の養生シートだけが頼りだが、それも吹き上げる風には弱い。 リビングキッチンの大規模拡張工事がなければ、屋根工事はとっくに済んでいたのだと、私は小さくなっている。 「雨音はショパンの調べ」だとか「雨だれこぞうちゃん♪」などと気楽なことを言い、「まるで落語に出てくる昔の長屋だね。」と雨漏りを受ける容器を並べて楽しんでいたのも束の間。 二人とも止まない雨にだんだん悲壮になってくる。 風を孕んだ帆のようにまくれあがったシートはログをも揺らし、野迫川丸は心細い一夜を明かしたのである。
止むを得ず帰阪を一日延ばすことにする。とにかく屋根の養生をしなければ帰るに帰れない。 雨に降り込められて、溜め置いてあった映画をたくさん観ることができたが、こんな時の映画はあまり心楽しいものではない。 夜半にまたきつい風雨になり、再び雨だれの合奏と共に眠ることになる。
この日は疲れ果てて、ジョークどころか声も出ない二人だった。 慌しく終いごとをして野迫川を後にしたのは、日がとっぷりと暮れてから...。 帰路の車中でやっと落着いて言葉を交わす。 「足場の補強だけで一日掛かるかと思っていたけれど、思いのほか早く済んだよ。」 「そうなの? この分では今日も帰阪できないかと、途中で諦めの心境になったけれど...。」 「屋根工事用の足場の補強も出来たんだ。よかったなぁ。」 「今回はほんとうに来れていてよかったね。ログの中が水浸しになるところだった...。これで雨も雪も大丈夫?」 「多分ね...。keiさんの大事な本と映画が水浸しになったら、一生恨まれるよなぁ。」 次回の野迫川入り、私は少々の不安を抱えて、ということになりそうである。 |