週末開拓民奮戦記

ハンドカット&セルフビルドのログハウス(58)

(一部を除き、大きな画像とリンクしています。)
2005年1月(1)
2005年は久々に雪の中で明けた。
真っ白な世界で新年を迎えるのは清々しい。
おまけに−10度という寒さは、昨日までの町の気候となんという違いだろう。
サラサラの雪を手ですくいながら、十勝の冬に思いを馳せている...。
大阪のうだるような夏の蒸し暑さにはいまだに慣れないが、夏の過ごしよさを最優先に考えた二人の選択は冬が厳しい地になった。

でも、不思議なものだ。
最初は寒さに震えていたのだが、身体が次第に慣れていくのが判る。
「寒いって意外に平気なもの。」とすまし顔でいる私たちだが、他人には負け惜しみに映るらしい。
が、決してそんなことはない。ログ内でも室温が20度を越えると暑くて気持が悪くなる。平均室温は18度ほど。それで充分暖かい。
雪の朝
「人は文明の利器に頼りすぎて、適応力がなくなってきているのではないか」、というのが私たちの持論なのだがどうだろう?
便利すぎるものは、凍てつく土地ではお役ご免である。
水や電気、暖房に関わるものは特にその傾向が大きい。町の生活から見たら二昔前にも思えるような生活が、山の凍てつく中では暮らしいいのが面白くもある。
昭和30年代後半〜40年前半にかけての便利さ加減が、一番叶っているような気もする。
便利なものを否定する訳ではないが、過剰な便利さは果たして人に必要だろうか...。
10年前のあの冬の日、便利すぎたものがことごとく否定された阪神淡路の大震災のあの時以来、私たちはずっとそんなことを考えてきた。

凍てつく冬を八度も越えて失敗を重ねながら、私たちは少しずつ、賢く過ごせるようになってきているようだ。
雪で押しつぶされそうになったブルーベリー畑 kiiさんの初仕事は、一夜にして降り積もった雪で、潰されそうになったブルーベリー畑の修復から...。
屋根の下地工事に追われていたため、手を付けられずに放置されていたブルーベリーの鳥除けネットだったが、ネットと絡んだ枝に雪が積り悲惨な状況になっていた。新年早々kiiさんの悲鳴を聞いて駆けつけた私は、「何よ、これぐらいで。」と冷たい。
お雑煮の用意をしている間に、kiiさんはネットの取り外しにおおわらわだった。
ゆっくりしようと約束していたけれど、「映画を観るのにも飽きた。バタバタはしないから...。」とkiiさんは作業を始める。
「keiさんは風邪気味だからログのお守りをしていたらいいよ。」そう言いながら、うちの施主さんは煩いからと頻繁にお呼びが掛かる。
窓の形、位置、高さの大まかな予定は立っているのだが、イメージが湧くと簡単に変更する悪い癖が私にはある。前日も両開きの窓を片側嵌め殺しの片開き窓に変更してしまった。おまけに、嵌め殺しのサイズも大きくとってこれほどに、と煩い。再々の変更に、kiiさんは用心深くなっているのだそうな...。

窓枠工事 細かい作業が多くなって大変そうだが、ログウォールを積んでいるときとはまた異なる楽しさがあるようで、老大工さんに戴いた道具類を嬉々として触っているkiiさんは、まるで子どものように嬉しげな表情である。 南面の窓枠が入った...。
筋交や間柱を入れている 頑丈にを心掛けて過ぎることはないと、筋交や間柱もしっかり入れる。(左画像)
薪ストーブの置かれる壁面は、なおいっそう強固になるそうで、どんなことになるのかと楽しみにしている。
窓の形が見えてくると、ずいぶん家らしくなってきた。
おお、家らしい...。
壁ができるのは嬉しいけれど、暗くなるのが難である。 入口脇の壁である。
断熱材や仕上げ材など、まだまだ幾多の工程を経なければならない。
暗くなったと言いながらも、壁があるのはいい。骨組みだけの時よりも一歩前進の感がある。この開口部は内玄関のドアになる。
このドアの外側には、風防室を作る予定である。
気温の低い地方では一番大切なものの一つだと思うが、近在の別荘住宅などでは考慮対象外の所が多い。
「一気に室温が低下することを防ぐために、風防室を作って欲しい。」と言った時、怪訝な顔をしていたkiiさんだったが、これは北国で生まれ育ったものの知恵かもしれない。
シシ肉を持ってきてくださった親父さんが「オオッ、大分形になってきたな。出来上がったら祝いに来るからな。」
コツコツと二人で造る家は時間が途方もなく掛かるけれど、気にかけながら眺めていてくれる人たちがいることに、励まされる思いがする。
kiiさんが作った雪だるま 暖かい昼には、雪景色を眺めながら陽だまりでお茶の時間を過ごす。
鳥たちの声が少し大きくなってきた。
春はまだ先だけれど、今は冬の日を楽しもう...。
雪だるまを作ったり、kiiさんの首筋に雪玉をお見舞いしたり、ソリ遊びに打ち興じたり、、雪が多ければまた愉しみも多くなるというものだ。
静かな真白の世界に、私たちの声だけが賑やかに響いていた。

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