週末開拓民奮戦記

ハンドカット&セルフビルドのログハウス(60)

2005年3月(2)
片道1時間半で、サンシュユが咲き出した明るい町の庭から、冬の世界に逆戻りする。
山の落葉樹はまだ裸木ばかり。
それでも、木々の枝先がなんとなく、そう、なんとなくだが、うっすらと染まってきたような気がする。
週末の天気予報は厳しかったが、土曜日はぽかぽか陽気で雪が解けだし、庭には土が多く見える。
雪解けのグジュグジュの地面は、少し乾かないと庭仕事も出来ないが、移植の予定を立てながら庭巡りをするのは楽しいものだ。明日は少しは作業ができるかな、寒くても雨や雪さえ降らなければどうということはないと、期待感がふくらむ。
ところが、である。昼過ぎから雪が舞いだし、気温は急降下する。
湿り気の少ないサラサラの雪が積もりだして、アッという間に真白の世界になってしまった。
小屋の解体工事 思い出深い小屋の解体が始まった。
この小屋は現在、リビングキッチン内に抱き込まれる形で在り、L・Kの外張りが出来上がれば解体されることになっていた。
畳三枚のこの小屋は開拓の当初に建てられ、左側のドアがトイレ、右の一坪強のスペースは二段ベットを作りつけてある。
狭いけれど、車中で宿泊していたことを思えば格段の進歩で、手足を伸ばして寝られるのはありがたかった。
ベットの上段から転げ落ちたことも今は懐かしい。kiiさんが慌てて頑丈な手摺を付けたっけ...。
ログで寝られるようになると、ここは道具小屋に変身した。ほんとうに長い間重宝したものだ。
「たかが小屋なのに、よくもこんなに頑丈に作ったものだね。」
しっかり組みすぎて、解体に梃子摺っているkiiさんに話し掛ける。
「解体する予定ではなかったでしょ。誰が勝手に図面を書き替えたんですかね。」
‘やぶへび’だった...。

楽しいな、巣箱作り。 kiiさんは作業のできない雨の日などに、「お遊びの時間」と称して巣箱作りに精出している。
鳥たちがもっとたくさん訪れてくれたら嬉しいと、いかにも楽しげである。
家造りの際の表情とはまったく違うのが面白い。
出来上がった巣箱は雨仕舞いも念入りである。
可愛いのができた!
「keiさんの憧れだった鳥の声で目を覚ます生活は、果樹を脅かす生活でもあるんだけどね。」と言いながら、いくつもせっせと作っている。鳥の声は今でも充分なのだが、鳥たちの姿をもっと頻繁に庭で見れるのは楽しいだろう。
楓に取り付ける。 作るのも楽しそうだが、この巣箱には何が入ってくれるかなどと想像しながら、取り付けるのはもっとウキウキしているようだ。
鼻歌の出るkiiさんに水を差す。
「はたして、鳥さんたちが気に入ってくれるかどうかが問題ですけどね。」
ログの傍らにも取り付ける。青い鳥が入るかな?
土曜の夜はお客様があった。
以前にひとりごと「海ちゃんのこと」
にも書いたことがある、京都の海ちゃんご夫妻である。
彼女は畑作りにのめり込み、頑張っている。
電話では時折声を聞くけれど、忙しさにかまけてなかなか会えないでいた。
お互いに、雪の多いこの時期なら時間を合わせられると、二年ぶりの嬉しい再会である。
離れていても友は友、呑みながらは勿論だが布団に入ってからも話が尽きず、結局朝の4時まで話し込んでしまった。
山のこと、畑のこと、野菜にかける思いや肥料作りの楽しさ、野菜や果実の保存法(特に乾燥保存)、花たちの愛しさ、将来への夢(この年になって将来の夢もないものだが。)、植物を訪ねて山を巡ったあの日のこと、遠い日の昔語りやと...。
海ちゃんの連れ合い殿とkiiさんは呆れ返っていたけれど、おなご二人の意見は一致した。
「まだ話し足りないねぇ。もっと時間が欲しいよ!!

車窓から手を振る友を見送りながら、また海ちゃんから元気をたくさん貰ったと、ほのぼの温かい気持に包まれる私たちだった。

2005年3月(1)
風邪を引いてなかなか治らずにグズグズしている私を気遣い、炊事当番を買って出て水の冷たさに悲鳴を上げたりしながらも、kiiさんの作業はそれなりに進んでいる。
まとめて休めないので進行状況は緩やかだが、それでもずいぶん家らしくなってきた。
自動カンナに板を通すkiiさん 前回までに挽いた板を、仕上げの自動カンナに通す。
板の表面がスベスベと滑らかになり気持がよい。
この作業はいつも私の役目だったが、「ゴホゴホしている人は役に立たない。」と、今回はkiiさんに奪われてしまった。
この作業はとっても楽しい。
この板が然るべきところに収まるとどうなるか、それを思い浮かべながら出来るせいか、木屑まみれが少しも苦にならないのだ。
「板挽きはこれからうんざりするほど出てくるからね。」恨めしげな私へのkiiさんの慰めの言葉である。

晴れたり曇ったり雪になったり、目まぐるしい天候が続いている。
でも、今までのように、天候のせいで作業をストップさせられるということがない。
雪が降るまでにと必死で頑張った昨年の暮れ、屋根にコンパネを張ったおかげで屋根下は濡れることがなく、寒いけれど快適である。
南面の板を張る 健康住宅に防蟻・防腐剤を塗布することにはかなりの抵抗があるが、山の家の床下や外壁下部には不可欠である。
湿気は禁物と、床を高くして風通しはかなりいいのだが、シロアリは基礎のコンクリートでさえ自ら土のトンネルを作って上るという。無垢の木だらけの我が家は、さぞかし美味しいことだろう。内部には防蟻・防腐処理は一切しないが、この部分だけは仕方がないと思っている。
北面作業中
南面作業中のkiiさん 北面作業中

南面完了 南面、北面が張り上がった。
仕上げの化粧釘は板が乾いてから。
釘打ちや塗装は私の仕事である。
壁ができて窓の位置がはっきりしたせいか、イメージが掴みやすくなった。
今はスカスカで風通しがよく寒いけれど、厚めのグラスウールを入れ、内壁や床を張ったら暖かくなる
北面作業完了
(南面) (北面)
冬の日中は、太陽が顔を出せば暖房要らずのポカポカになるだろう。
リビングキッチンは、家族が一番集まる場所になりそうな予感がする。


気が早い私は、もう内装のイメージを完了済みである。

流し台や調理台はシンプルで丈夫なものを考えている。極力安価で済ますことをモットーにもしている。
それに、飾ることが苦手な私には飾れない台所が似合っていると思う。
『男の台所』のような雰囲気になりそうだと
kiiさんは恐々としている。
調理を押し付けようという気は決してないが、台所に立ちたいという気分にはさせてあげたい。
何と思いやりのあることだろう...。

半壊した資材置き場 雪が多かった今年は、またまたアクシデント発生。
資材置き場の屋根が壊れてしまった。
一年前に補強をしたのだが、家造りの完了まで待ってはくれなかった。
仮の置き場だったから屋根の勾配も緩かったし、丸太も少なかったけれど、それにしても雪の重量は恐いものだ。
作業がまた一つ増えたと、kiiさんは腕を組んで思案顔である。


週末開拓民奮戦記へ戻る  ハンドカットのログハウス(59)  夢の轍のTOPへ