週末開拓民奮戦記

ハンドカット&セルフビルドのログハウス(24)

9月9日

木挽き作業ばかりが続くとちょっと気が重いので、間に他の作業を挟む。
間柱
(マバシラ)と窓枠用の材が必要量挽けたので、ロフトの妻壁を作る作業を始めた。
L型金具やボルトを埋め込んである部分などはかなり手間が掛かる。
作業するkiiさんの横で私はカナヅチとノミを持って手伝っている。
大人数で取り組めるという作業ではないから進行状況は遅いけれど、ログウォールを積んでいる時と違い、木工事は形
になって見えやすいのでkiiさんも楽しそうである。

母屋
(もや)や棟木との接点や屋根部分との取り合いなども複雑な工程で、「アッツ、違った...。」と言うこともたまにあ
るけれど、窓枠や間柱が入りだしたロフトは何だかとっても家らしくなってきて、その嬉しさが勝っているせいかあまり気
にならないのはゲンキンな話である。
間柱工事は12ヶ所なのだが、4ヶ所が出来た。完了したら板を挽きロフトの外壁を張る。
南からの吹き込みがきついので妻壁部分は現在シートで覆っているのだが、ブルーシートが取れる日も近い...。
ロフトの正面・南側の妻壁に窓枠とドア用の枠が取り付けられた。
左の画像
正面側で南の妻壁。
窓枠の左横はベランダに通じるドアがつく。
この部分からの吹き込みがきついので、今は
シートで覆っている。


右の画像
裏面、山側の妻壁。
谷からここに吹き下りる風が何とも涼しい。
ロフトの裏面・北側の妻壁に窓枠が取り付けられた。

“こんなことやあんなこと”で一日が過ぎた...。

愚痴っていてもはじまらないから抑えているけれど、イノシシとの終わりなき戦いは相変わらず続いている。
小から中規模程度の荒らし方は頻繁にあり、擬似ワナを仕掛けるなどの対策はしてきたのだが、今回はまた大規模な
土木工事を遂行していてくれた。足跡から見るとかなり大きなシシである。
5ヶ所ほどのエリアを徹底的にひっくり返してあり、修復と対策に追われた。
根が乾いてしまったものもかなりあり痛手だけれど、植物は強いから少しは生き残ってくれるに違いない。
畳半分ほどにぎっしり増えていたクリンソウなど、この際にと株分けをしながら植え直す。
畳三枚ほどの広さに植えられたクリンソウを見てkiiさんの慰めの言葉。
「ずいぶん増えていたんだね。これが全部咲くようになったら見事だよ、きっと。植え替えが出来てよかったね...。」
そうだね。そう考えれば前向き志向だよね...。

擬似ワナを作っても避けて侵入する。彼等も学習しているのだろう。
「こういうのをイタチゴッコと言うんだよね。」「いのししだからシシゴッコでしょうが。」
最後のエリアを修復する頃にはヤケクソで冗談も出てくる。
周囲を囲わなきゃと言う人もいるが、今は300メートルを囲う作業に費やす時間が取れない。
その作業をするためには、台風の倒木などが放置されている山の斜面の整地などをしなければならない。
ログを目鼻がつくようにしておかなければ、その作業に専念できないのである。

遅い昼食を済ませたのは3時。
ログに取り掛かるには中途半端な時間だからと、懸案の作業をあれこれ片付ける。
どれもこれも必要な作業だけれど、することが多すぎる二人である。
整地した部分の左には開拓当初に切った杉を積んである。 シシ殿に荒らされたのを機会に、このエリアも整地する。

このエリアの左側に、開拓当初に切り倒した杉が積んである。
芯の赤太の部分までは傷んでいないので、屋根の垂木
(タルキ)として
利用するつもりだ。
芯の部分だけを取り出す為には手間がずいぶんかかるけれど、木挽
き作業はもともとそのために決意したこと...。
追っつけその木挽きも始まるので、曳き出しやすいようにする。

少ない道具、応用の道具でどこまでできるものか...。
用途に応じて寸法切り。真中の丸太の直径は44cm。
丸太を用途に応じて寸法切りして運
ぶ。真中の丸太で直径44cm、左が
38cm。これだけ太いと迫力がある
が、残念ながらこれほどの太さの木
は野迫川倶楽部にはあまりない。
デッキのテーブルにしようかな...。

ログに上がる階段は丸太を置いただ
けのものだったが、簡易の階段を作
る。これで落ちないで済むと一安心。
ログへ上がる簡易の階段を作る。

9月2日

筋交いの作業が完了すると、休む間もなく次の作業が始まった。
部材の板や柱を自分で挽くことは、またまた多くの時間を要するのだけれど、開拓当初から切り倒してある
杉を生かさなければとの一心が、木挽き作業を決意させたのである。
利用すれば資源を少しでも無駄にせずにすむ...。
当分この作業が続く。
買えば簡単に済むけれど、切り倒してある杉は利用されないままで朽ち果てていくことになる。
何をそこまで拘るのかと呆れる人もいるけれど、拘ってもいいじゃないか、とことん拘りたい心境なのである。
ロフト・台所と作業が急がれるけれど、今更たった数ヶ月のことで妥協したくはない。

一休みしながらkiiさんが呟く。
「この作業は人様に手伝って貰う訳にはいかないね。」
「危な過ぎるよね...。」と私も頷く。

それ専用の道具など、高価過ぎて素人に手が出るようなものではない。
応用の道具を使った木挽き台には安全装置など勿論付いていない。
苦肉の策の応用編は危険極まりない道具なのである。
使いこなすには熟練を要する上に、誤ると電動ノコギリを一瞬にして焼いてしまうこともありうる。
そして、危険である。
「手伝いにきてくださって怪我をしたのではお互いに辛いものね。」
あの事故から二年を経てもまだリハビリ中のkiiさんだから、怪我に関してはより神経質になるようである。

息の合った名コンビとはいかないけれど、お互いに注意しながらモクモクと木挽き作業を続けることにしよう...。
木屑にまみれて部材を挽く 妻壁の間柱や外壁の板、床板、天井板、窓枠...。
一体どれほどの木挽きをしなければならないのかと、考えた
だけでゾッとする。
今挽いている部材はロフトの妻壁を作るためのもの。
長短様々な部材が作られていく。
無心に木を挽くkiiさんの表情は、時間に追われるしんどさは
あるものの不思議と安らいでいる。
挽きあがった部材の一部 出来上がった部材の一部

木挽きした材は電動カンナを掛けて仕上がりになる。
これはロフトの間柱と窓枠になる。
杉のよい香りが一面に漂う。
kiiさんがやわらかな表情をしているのは、無垢の木がかもし
出す「安らぎ成分」のおかげかもしれない。

kiiさんの助手を務める私も、いつの間にか木挽き作業に熱中
しているのが可笑しい。
細かい木屑が皮膚を覆い、お化けのようになりながらお互い
の姿に爆笑する。
洗濯物が大変だろうなの危惧は何処へ...。

この木挽き粉は細かくて、土に同化しやすい。
土作りに新たな用材が出来たと、私は非常に喜んでいる。
「部材作りに熱心なのは、イコール庭造りが頭にあるからで
しょう??」
そこのところはしっかり読まれていたようである。


棟上げ後の最優先事項が筋交いを付けることだった。
「台風シーズンの前には何とかしてね。」風が吹くたびに私は恐くて身をすくめていた。
筋交いを付ける作業はもっと簡単に考えていたのだけれど、部材作りから始まって、所要日数は棟上げ後の二週間が
掛かってしまった。何しろ家造りは素人の週末開拓民のすることだから仕方がない。
もっともkiiさんに言わせると予定通りなのだそうだが...。
筋交いを取り付ける部分を削っている ロフトの柱を削り棟木や母屋(もや)も削り、挽いた筋交いをはめ込
む作業。
丸太に丸太を埋め込むのだから、なかなか捗らない。
矢印は固定個所 上部3ヶ所の矢印は直径9mmのボルトを埋め込んである。
ナットの留め役は私。「緩いのがあって屋根を持っていかれたら大変
だもの。」と渾身の力を込める。「ドリルが締めてくれるのだからそんな
に形相を変えなくてもいいよ。」とkiiさんは呆れ顔。
下部の柱とロフトの接合部分はL型の金物で留め付ける。

これで前後左右・上下の揺れにも大丈夫かな...。
強風でも屋根を持って行かれないかな...。
数年前の台風による自然災害の恐さを目の当りにしてしまった私は、
必要以上の恐がりに変身してしまった。
「落っこちるぐらい石橋を叩いたっていいじゃない?」とばかり...。
筋交いが全部取り付けられた 十本の柱に筋交いが付けられたところは、結構壮観。
丸太の筋交いって、やはり迫力がある...。
取り付け作業は大変だったけれど、「実にいいなあ!!」と見惚れてい
る。

ひとつひとつの小さな作業をこなしながら、形にしていく喜び。
これがハンドメイドの醍醐味なのであろう。
時間が掛かりすぎるきらいがあるけれど、その分喜びが倍加することも
事実。


どちらを取るかと聞かれたら、今は選択肢は不要と即座に答えが出せ
るだろう。

8/15 棟上げ風景
  
                                                                                  
 週末開拓民奮戦記へ戻る  ハンドカットのログハウス(23)  夢の轍のTOPへ