週末開拓民奮戦記

ハンドカット&セルフビルドのログハウス(54)
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2004年10(1)
久方ぶりの野迫川行きは台風22号で足止めを食い、三連休の予定が狂ってしまった。
棟上げの第二期工事を控えていたので、この予定変更は痛かった。
台風の通過を待ちかねて、野迫川へと車を走らせる。

倶楽部に到着して目を剥いた。
「ワァッ、見事に草だらけだね。」一ヶ月ほどの留守で庭は悲惨な状況を呈している。
「ゴメン、一度だけでも草刈りをしようと思ったけれど、その余裕がなかったんだ...。」
「仕方がないけれど、心して掛からなければ大変だね。」「棟上げが終ったら、半日だけでも手伝うよ。」
夏の花はすっかり消えて、秋の花がそこここに、草に埋もれながら咲き乱れている。
気温も下がり、日の暮れが早い。季節が進んでいることを実感させられる。
ウィンチの足場を組むT君とkiiさん。 10日(日)、早朝からkiiさんは棟上げの準備に取り掛かる。
7時過ぎに奈良のT君からTEL。
「一人だけど、手伝いに行くワ。」

「こき使われるよ!!」「覚悟してるヨ。」
二週に渡って片付けようと思っていた棟上は、助っ人の登場で何とか今週には済みそうだと、嬉しい予感。
10時過ぎにはT君が到着。
午前中はウィンチの足場を組んだりと、準備に余念が無い。
サァテ、これは重いぞ!! 一番大変だったのはこの、母屋(二本)と棟木を軒上に上げる作業。
何しろ太い、長い、従ってすごく重い...。
卜伝君とウィンチ&男二人の知恵をフル回転して何度も調整しながら、どうにか上げた時にはもうグッタリであった。
「ヤレヤレ、やっと上がったなぁ...。」とT君。
もう少し右だな? まずは北側の母屋(もや)から。
桁に束を立て、母屋のホゾ穴に
はめ込んでいく。
数多いホゾ穴は一見正確そうだが決してそうではない。
微調整を繰り返しながら結構時間が掛かる作業である。
北側の母屋が組み込まれた。
「アッ、しまった。」とkiiさんが叫ぶたびに、「今度は何?今度は何処?」と私とT君は引き攣った顔を見合わせる。母屋を一本据え付けたところで、昼ご飯兼お疲れ休みにする
午後の作業は、ウィンチの足場を組み直すところから。
ここで手抜きをすると後が難儀だからなぁ。」などと言いながら、手際よく組んでいく。


まず南側の母屋を組み上げる。
T君が次々と桁に束を埋め込んでいく。
桁に束をはめ込んでいくT君。
周囲の山々にこだまして晴れた青空に吸い込まれていく、乾いた木槌の音を聞きながら、私の気持も弾んでいる。
いつもそうなのだが、この木槌の音が私は好きだ。建物が立ち上がっていくその過程で、一番好きな音であり、また一番好きなシーンである。


最後に残るは棟木である。
何度も何度も調整しながら、「これでO.Kだな!!

と、こう書いてくると何事も無く進んだようだが、どっこいそうではなかった。
ログと母屋や棟木との接合面では相当にてこずらされたし、微調整にもかなりの時間を費やす。
日が暮れる頃にやっと完了。
高い足場の上り下りはきつい...。
その日の遅めの夕食は、いつになくお疲れモードの三人であった。

調整を続ける二人。 ヨシ、これでO.Kだ!! 棟が上がった!!
調整を続ける二人。 ヨシ、これでO.Kだ!! やっと懸案の棟が上がりました。
しかしまぁ、手造りの家らしい簡素な棟上げであることよ...。まさに省力化の極み。
卜伝君とウィンチ一台の力を借りはしたが、小人数でもこんな作業ができるとは、人の知恵は使えば使うほど湧いてくるものらしい。

棟と束を止めつけている。 翌日は、昼過ぎに帰路に着くT君を労わり早朝から作業に勤んでいただく。
昨日組み込んだ母屋・棟木・束を羽子板やL型金具で止めつけていく。
数が多いのでこれも半端な作業ではないが、これが済まない事には棟上げの完了にはならない。
「飽きてしまうなぁ。」と言いつつも、何とか終えてホーッとため息の二人だった。
T君、今回もお世話になりました。
母屋と束・束と桁を止めつけているkiiさん。
T君を見送った後、kiiさんは養生に取り掛かる。
このまま即屋根工事には辿り着けないのである。
屋根を掛けるまでに、垂木などを作る木挽き作業を組み入れなくてはならない。
雪が降る前にはなんとか屋根を仕上げたいと思っているが、あくまでも予定として、焦らないことにしている。
養生に時間を取られ、帰路に着いたのは日がとっぷりと暮れたころだった。
養生の作業中のkiiさん。


今回嬉しい仲間が共に野迫川入りした。
昨年ホゾ穴開け機を下さったのが、古い知り合いの大工さんなのだが、今年80歳になられる。
道具の整理を始めておられて、「重い道具でも使うなら引き取りにおいで。」と電話をいただいたのである。
kiiさんにとっては何より嬉しいこと。今回のリビングキッチン造りに役立つ道具ばかりなのである。
「大工仕事にはまだ少し未練があるから残しておくものはあるけれど、いずれ貰うて(もろうて)もらうからな...。」と指差される機械や道具たちに、kiiさんは目を輝かせる。
男二人の道具談義は尽きること無く、生き生きとしていかにも楽しそうである。
道具たち(1) 「何の趣味も無いけれど、道具屋さんに行くのは好きやったなぁ。」そう述懐されるほど、整然と整理されたたくさんの道具たちに、いかにも愛しそうに目をやる様子には微笑ましい気持にさせられる。
「なんだかとっても可愛い。」と内心ふっと思い、聞こえたかなと慌てて顔を見上げる場面も...。
ノミの類もかなりお持ちなのだが、新品の平ノミ11本を一揃い、使い込まれた上質の叩きノミも6本を戴き感激した。
木工ドリル用のドリルも多数戴く。
道具たち02 電動の仕上げカンナ二台、溝掘り機二台には溝掘りカンナ数種付きである。
卓上切断機、丸ノコ、その他細々した道具類も多々。
古い型だといいながらも、手入れが行き届いていて、何れもすぐに役立つものばかりである。
kiiさんはきっと、抱いて寝たいほどの嬉しさだったに違いない。
卓上切断機や電動丸ノコ
その数日後に再び電話をいただいている。
「釘打ち機やその他にもまだいろいろ、出してあるから取りに来てや。」と...。
「山で活かして貰えるなら、こんなに嬉しいことはないワナ。」 とのお言葉、ほんとうに有り難く感謝している。


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