つれづれなるままに

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2005年|1月2月4月5月9月10月11

2005年3月
   
【じん兵衛さん】【フクシアの実
 
3/10  じん兵衛さん
大阪人はうどんが好きである。
街なかを歩いていると必ず目にするのが「うどん」の看板。
もっとも関西は、最近ラーメン店のほうが幅を利かせている感がないでもない。

北海道から関西に移住した頃は、うどん定食なるものにびっくりしたものだった。
うどんにご飯とはなんという取り合わせかと、お昼のうどん屋さんでは目を丸くしたものだ。
麺類は何でも好きだったが、北海道に住んでいた頃はラーメンを食することが多く、うどんや蕎麦、素麺などは生活の中にさほど頻繁に登場した覚えが無い。
だから関西のうどんや素麺の食文化はカルチャーショックだった。
特に素麺にはそれを感じる。
蒸し暑い関西の夏に、冷たく喉越しのよい素麺は最高の食物だと...。
これが夏の涼しい北海道では、これほどの位置を占められただろうかと思っている。
ある猛暑の夏を、kiiさんと二人、素麺と冷やしうどんで乗り切った記憶もある。

「あの年は、5月の連休から猛暑がはじまったなぁ。」と、思い出語りにもしばしば出てくる年だった。

素麺は家庭でもそこそこ美味しくいただけるが、うどんとなるとなかなか難しい。
乾麺の冷やしうどんなら何とかなるが、温饂飩の出汁とコシのあるウドンのあの絶妙のバランスは、家庭では出しにくいもののような気がする。
上手くうどんを作れる人はいるかもしれないが、出汁はそうはいかないだろう。
私はと言えば、出汁もうどんもあっさりと白旗を揚げる。

大阪外環状線沿いの富田林を抜け、河内長野との境辺りに錦織公園がある。
その公園の南側に「じん兵衛」といううどん屋さんがある。
初めて知った時は、「こんな所に、こんな美味しい店があったなんて...。」と吃驚した。
もう15年ほど前のことになるだろうか。
近くはないので頻繁には行けないが、うどんが猛烈に食べたくなると出掛けていく。

手打ちのうどんは少し細めでコシが強く、出汁はあっさりとしていてしかもまろやかである。
化学調味料を使わない出汁の、後口のよさには感動する。
「さぬき」は一番シンプルなメニューで、素うどんにワカメが入っているもの。すりおろしたショウガを少し落としていただくが、それがほんとうに美味しい。
ショウガの香りが鼻腔をくすぐり、上品な味と相まって実にいいバランスなのである。
七味を入れて味が変るのがイヤだと、kiiさんはそのままを楽しんでいる。
じん兵衛さん 創業は1982年というから、もう23年になる。
定休日は日曜で、平日の11時から14時半までの営業だが、「手打ちのうどんは、一人で作るのは一日50玉がせいぜいなので。」と、麺が無くなったら閉店になる。
注文を聞いてから麺をゆでる。
勿論天ぷらも注文を聞いてから揚げるので、時間は多少掛かるが、カリッと揚がった熱々の天ぷらには感激する。
「イラチのkeiさんが、ここではイライラと待たないんだから、笑ってしまうよ。」とkiiさんが言うが、そうなのだ。笑顔のステキなおかみさんと、世間話をしながら待つひと時。美味しいものを待つ時間は苦にならないとは、いかにも食いしん坊の私らしい。
うどんに組み合わせる丼は普通サイズとミニサイズがある。かやくご飯もお薦めである。
海老天が二つも入っていて、いろいろな具のハーモニーが楽しめる「じん兵衛うどん」は、特に固定ファンが多そうである。
kiiさんは冬はもっぱら鍋焼きうどんを贔屓にしている。
私はいつの頃からか、カレーうどんにハマっている。
じん兵衛さんのカレーうどんは、私の好みにピッタリと来てしまったのである。
今日は他のものにしようと決めて出掛けても、席につくと「いつもの!」と口にしている。
「もう何年、カレーうどんばかりを食べているの?」とkiiさんは呆れるが、私の「いつもの!」は、相も変わらず一年中、そう、冬は勿論、夏の暑い日も「じん兵衛さんのカレーうどん」なのである。
                     
3/04  フクシアの実
新しい園芸誌が届き、色とりどりの花の中にフクシアを見つけて、数年前のフクシアにまつわる話を思い出した。

親しい友がある日言ったのである。
「keiさん、フクシアの花って知っている?」
「知ってる、知ってる。一時期、育てていた...。」
「フクシアの実って食べたことある?」
「ううん、食べたことなんかない。食べられるの?」
「それは知らないんだけれどね...」
その友人の言葉によると、あまりに美味しそうだったのでついっと手が伸び、口に放り込んだそうな。さほど美味しいとも思わなかったらしいが、食後数時間を経過した後に目の前がおかしくなったのだとか。


「理髪店の広告塔のように顔がダンダラに見えだしたのよ。」
気分が悪くてその日は横になっていたが、翌日病院に行って検査したけれど異常がないと言われたという。
「でも確かに鏡に映った顔が広告塔に見えたのよ。何度も見直したけれど、赤や緑や青の縞のようにね。」「エ〜ッ...。」「keiさんも試しに食べてみない?ダンダラ模様になるかどうか知りたいのよ。」と彼女は真剣だった。
とんでもない、そんな依頼はまっぴらだとお断り申し上げたが、その時の会話が記憶の底にあって、時折ヒョイと顔を出す。


気になって図鑑を調べてみた。
フクシアは熱帯アメリカ原産。アカバナ科ドイツの植物学者レオナルド・フクスにちなんで付けられた。別名ツリウキソウ(釣浮草)、欧米ではイヤリングに似ているのでレディー・イヤドロップスと呼ばれる。 可愛い花である。
最近は品種改良が進んで園芸種も数多く、気軽に楽しめる植物になっているらしい。
育成の最低気温は5℃。
山の庭では育ちにくいため、私の植物リストにはまったく入っていない。


食用になるかどうかの記載については、何処にも載っていなかったので、ネットで検索する。
フクシアは、花も実も食用として立派に通用しているものだった。
(み)はソースやジャムにしても美味しいらしい。花はサラダにも使う。
ということはどういうことなのか。
彼女が口にしたものはフクシアの実と似たもので、しかも微量にしろ毒性があるものだったということか。
考えられることは購入した際に何らかの薬剤が散布されていたか、或いは株元に漉き込まれていたのか、そして、その折の彼女の体調も絡んでいたのかと思いを巡らせる。
花好きの彼女が花の形や名前を勘違いするとも考えられず、この不思議な出来事はいまだに解明されていない。

いずれにしても、フクシアの実の冤罪だけは晴らさなければと思っている。

        

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