つれづれなるままに |
2005年5月 |
5/13 | ダニのお話 |
山の庭で膝をついて草を引きながら、ふっと何気なく太腿の辺りに目を落とす。 動きやすいようにと、その日はジャージーを作業着代わりに着ていた。 何だろう、ゴミでも付いているのかな?変なゴミだなぁ...。 指先で摘まんで吃驚した。これは「にっくきダニー」ではないのか。 大きい。体長は4mmほどもある。腹部はペッチャンコで、吸血相手を探していたところだったのかもしれないが、そうはいかない。 普通の害虫なら簡単にご臨終にできるのに、これはなかなかに手強い。 持っていたバチヅルの頭で捻り潰す。 ダニには二度、苦い体験をしている。 何れも山で庭仕事をして帰阪した翌週の話である。 一度は、眉毛の下にゴミが付いたかなという程度の小さな点だった。 なかなか取れないゴミをピンセットで引き抜いて吃驚した。よく見ると脚があり細かい毛があるではないか。ミリの世界だから拡大鏡で念入りに見てみると、それは不気味な様相で、それがマダニとの初めての出会いだった。 私は知らなかったが、帰宅したkiiさんに見せると、若い頃には好きで山歩きをしていた彼だったから、確信をもって即座に野山にいるダニだと言い切ったものである。 洗顔で擦るのでダニはとっくに死んでいて、その最初の出会いは極軽症だったが、それから半年後にひどいのに襲われた。 というと語弊があって、刺咬されたことに気付かなかったというのが正しいかもしれない 草引きで木々の下にしょっちゅう入り込むけれど、ムズムズするのはブヨのせいだと思っていた。帰阪して左の脇腹のうしろ辺りが痒いなぁと思っていたが、我慢できずに掻きむしり、キンカンを塗っておいた。勿論自分では見えないから、手探りである。 一週間経っても痒みが消えないので、已む無くkiiさんに助けを乞う。 ひと目見たkiiさんが叫んだ。「何か食いついているぞ。ダニだよぅ!!」 ピンセットで引き抜くが、それはブチッと音がしたのである。 既に死んではいたけれど、見せられた残骸には、この私も流石に震えがきた。 死んでも喰いついたままで離れないところなど、そのしつこさときたらスズメバチもどっこいである。 痒みと肌の傷はそれからでもなかなか消えなかった。 「ダニは犬などには付くけれど、人には付かない筈だ。」と宣う人もいるが、それは大きな間違いである。人間も「吸着対象になる動物」だということは、身を持って証明している。 村の方が、この辺りではウツギはダニの木と言って嫌われている、と教えてくださる。 地方によっては、ネムの木もダニの木と呼ぶらしい...。 でも、注意するべきは上ばかりではなかったのだ。 庭に薬剤を散布しないことも、彼等にとってはいい環境なのかもしれない。 マダニ刺咬症はライム病・日本紅斑熱などを引き起こすこともあるのだとか。 マダニは鹿などの野生動物に吸着し、そのマダニを介して野生動物の持つ病原体が人に感染するのだそうである。鹿などの増加に伴い、感染する人も増えているそうな。 ダニ防除の注意書き通りに実行していたら、庭は草だらけになる。 何しろ第一条件がヤブに近寄らないことなのだから...。 勿論長袖に長ズボンを着用するなどは必須である。 犬用の防ダニスプレーはヒノキの抽出液が主成分だと聞くが、草引きに入る周囲には、煮出ししたヒノキの抽出液などを撒いてみようかと思っている。 それにしてもこんな話を書いているだけで、全身がたまらなくむず痒くなるのだから、あの小さな身体で、よく、こんなに強烈な印象を与えられるものである。 マムシ、スズメバチ、マダニに比べると、顔面がお岩さん状になるあのブヨが、なんと可愛く見えることだろう...。 |