つれづれなるままに |
2005年9月 |
この日の出来事には追記がある。 三鷹周辺には、絵本や児童書を扱っている書店が多いのだと、以前から聞き知ってはいたのだが、折角の機会だから気になる数軒だけでも行ってみようと、娘がネットから検索しておいてくれた。 彼女も私以上の絵本好きだから、楽しみにしていたらしい。 一緒に本屋さん巡りをするなんて、いったい何年ぶりのことだろう....。 一軒目は三鷹駅から近いところ。 入って驚いた。自然素材の生活用品や有機の野菜が場所を占め、その中に絵本がチョロリとある。 「ウーーーン、なんだか違うよね。」「この雰囲気にはちょっと馴染めないよね。」と、がっかりして店を出る。 そういえば大阪にもあった。 絵本の専門店というから楽しみにして訪れたのだが、教材を販売する店の片隅の小さな本棚に、僅かばかりの絵本が並べられているだけだった。 絵本の解説書に記載されていた記事を参考にして行ったのだが、当てにならないものだと相当に落胆したものだ。 もう一軒は、数年前から気になる存在だった絵本の古本屋さん。 在庫数4000点あまりというから、欲しい絵本もリストアップしておいた。 三鷹の森からは電車の接続が悪く、子連れでもあるので奮発して、三鷹台駅までタクシーを利用する。 で、結論が先になるが、「行かなければ良かった。」なのである。 「狭いけれど子連れ歓迎。」とのことだったが、子供が本を手に取ろうとすれば飛んできて、勝手に取らないでという態度。 思わず泣きべそのような表情を見せて振り向いたゆうちゃんに、その瞬間、来たことを後悔していた。 書架に絵本が並べられ、その本の前にも横積みされているから、狭い通路をカニさん歩きにしてもウッカリすると身体が本に当たる。 当たって数センチゆがんだ本を即座に直しにくる。 娘は「母さんゆっくり見てきて...。外で待っているから。」と、子供を連れてさっさと店外に出てしまう。 本は多くが透明のカバーでガードされ、開けて見れないようになっている。 カバーの掛かっていない本を手に取りかけたら、「掛かっていない本は見てもいいけど、掛かっている本は声を掛けてください。こちらで外しますから..。」 客の動向をじっと伺っているかのように、背後から声が掛かる。 いかにも剣のある表情の女店主の顔を見やり、本を元に戻すと、私は黙って再び訪れることはない店を後にした。 振り返りたくないから、入り口の戸も後ろ手に閉めて...。店内に居たのは僅か5分ほど...。 「ご免ね、こんなところに連れてきてしまって...。あの人、ほんとうに絵本が好きなのかしら??」 娘が日暮れの道を辿りながらポツリと言う。 「どんな所かは来てみなくては判らないじゃない?それよりも、ゆうちゃんが可哀相だったわね。」 子供が好きで絵本が好きで、そして絵本屋さんになった人もいれば、絵本は好きだけれど、それは商品としてしか見ていない人もいるのだろう。 「オーナーご夫婦は絵本にとても詳しく、お話をするだけでも楽しい。」とあったが、知識と人格は違うものなのか。 それにしても当てにならないのはネットの紹介。ひょっとして別人ではなかったのかと疑ってしまう。 ジブリで昼食の順を待ちながら、絵本を手にして和やかだった人々の表情を思い浮かべ、その違いに唖然とさせられたひと時だった。 |
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