つれづれなるままに

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2005年11月
    
【これって、傷んでますよね...?】
                 
11/08 これって、傷んでますよね...?
 今夜は簡単なもので済ませたいという日は、時折あるものだ。
冷蔵庫にはハムがあるし、ピーマンもある。 そうだ、スパゲティ・ナポリタンにしよう。

 kiiさんは麺類は好きなのだが、どちらかというとスパゲティだけは苦手な部類に入る。
反対に私は麺類といえばなんでも大好きで、特にスパゲティはかなり上位にくる。
中でも鷹のツメや青森のニンニク、タコやタラコを使ったミズナのスパゲティは大好物。
焼き海苔をどっさり散らしたら、もう言うことはない。 思い浮かべただけで生唾が出てくる。
二個一コンビの私たち夫婦は単独行動をすることは極めて少なく、したがって私は、別メニューを作る煩わしさを避けて、「スパゲティ食べたい病」をいつも抱えていることになる。

 そんなスパゲティ苦手のkiiさんが、唯一、美味しいと好んで食べるスパゲティがナポリタン。
イタリア料理のメニューにはナポリタンなるものは存在しないと、何かで読んだ記憶が朧にある。
あの「喫茶店のナポリタン」は和製メニューなのか...。
昔、ときおり食したスパゲティ・ナポリタンは、記憶の中にしっかりとインプットされて、我々の世代にとっては懐かしき昭和の味のひとつらしい。
ナポリタンと聞くと、「あぁ、あのケチャップを絡めたのね?」と、遠くを見つめるような眼差しをする人が多いような気がするが、kiiさんも例外ではない。
やむを得ない、スパゲティならなんでもいいと割り切って、最近、我が家の食卓にはしばしばこれが登場する。

 今日も今日とて...。
バランスを考えてタコとビーンズ、海草のサラダも添えようと、歩いて3分のスーパーへ出かける。
レタスを選んでいると、隣に人の気配がする。
つっと伸ばした手がレタスを二度三度と持ち替えている。
「これって、傷んでいるんですよねぇ...」独り言のようでもない物言いに、ふっと顔を上げる。
レタスの切り口からにじみ出ている白い液体を指し示しながら、どうやら私に尋ねているらしい。
歳のころは25〜6歳ぐらいか...。
しきりにレタスの重さを量っているような手つきで、いかにも悩んでいる風である。
「あの、この白い液、気持ち悪いですよね...。」

「レタスってね、語源は「ミルクのような液が出る」とか「乳」という意味合いらしいですよ。だから、白いエキスがにじみ出ているものほど新鮮ということじゃないかしら?同じ値段なら重くてずっしりしたものを買いたいのが人情だけれど、フックラと巻いたもののほうが、甘みもシャッキリ感も美味しさも勝っていると思いますよ。といっても、軽くてスカスカでは困るけれどね...。」
遥かに離れて住まう娘は、どんな表情でレタスを選んでいるのだろうと、つい娘に話しかけているかのような錯覚を覚えつつそう説明する。
亡母の受け売りなのだということは胸に収めて...。
「そうなんですか! でも一個も買うと多いですよね。」
「サラダ以外にはあまり使わない?レタスってね、火を通すと美味しいのよ。炒めたりスープに入れたりしてご覧なさい。焼き飯など絶品よ! でもグタグタにしてしまってはダメよ。」
「そうなんですか。ありがとう!!」嬉しそうに微笑んだ彼女の声が、とても大きく胸に響いた。

 そういえば以前のことだが、八百屋の店先でこんな会話を耳にした。
「レンコンから糸が出ている。これは腐っているに違いない。」と返しにきた人がいると...。
最近の若い者はそんなことも知らないのかねと店に居た人たちは笑っていたが、果たしてそれだけでいいのだろうか。
若い人たちに、ごく普通の日常の知識を伝えてこなかった、世代の責任というのはないだろうか。
そんな関わりや時間さえも希薄になっている現代なのかと、寂しい思いがしたことである。

*****
 生活の利便性、家事の省力化は「お手伝い」という作業を子供から奪い、それが生活するための基礎力の低下にも繋がっていると常々考えている。これは子供だけではなく、大人たちに対しても言えることだろう。
人は、歯止めなく物に依存する生活を、長く、し過ぎてしまった。
危急存亡のときに、私たちにはまだ、対応できる能力が残されているだろうか...。

 いつごろからだろう...、成績さえよければよい、勉強が最優先で、人よりも上に上にと親たちが言い出したのは...。
それでもなお昨今は、子供たちの学力の低下がやかましく叫ばれているではないか。
生きることの基本の基になることよりも、結果や成果ばかりを重視する生き方をよしとしてきたつけは、いつかきっと確実に巡ってくるに違いない。
 
  

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