つれづれなるままに |
2004年10月 |
10/20 | 埼玉にて(2) |
今回の埼玉行きでは後半の三泊だけ、kiiさんが合流した。 美味しいお魚が食べたいという娘一家のために、第二子誕生のお祝いの鯛や、彼女たちの好物のウナギやアワビを入れた発泡スチロールの重い箱をお土産に、kiiさんが到着するのを私は今か今かと待ちかねていた。 ゆうちゃんの遊び役をkiiさんに任せて、ゆったりノンビリさせて貰おうとの目論見である ウナギは関東と関西では料理法が異なる。 どちらがどうとは言えないのだが、幼い頃から馴染んだ関西流がやはり娘はお気に入りの様子で、「お土産は何にする?」と問えば、必ず帰ってくる言葉が「五郎藤のウナギ!」なのである。 鯛はマツカサ仕立てにもして、久しぶりの団欒を味わう。 二人きりの食事に慣れて久しいが、家族全員で囲む食卓は、話が弾んで笑い声も高く賑やかである。 三泊で、しかも連休を挟んでいては、ジブリ美術館のチケットも取れないだろうとはじめから諦めて、近場をウロウロしたり家でゆっくりすることに...。 さいたま市の武蔵浦和には、今度こそkiiさんを連れて行きたい場所が一ヶ所あった。 7月のひとりごとにも書いたが、「むさし坊」のラーメンをkiiさんはまだ食していないのである。 お正月に合流した折は、あいにくのことに休業していたのである。 家族が「美味しいよねぇ。」という中で、kiiさんだけは一人蚊帳の外で、恨めしい思いをしていたらしい。娘に勧められて、着いた日の昼ご飯に早速探訪に出かける。 食味体験をさせてあげようと、其々、別のものを注文する。 「むさし坊ラーメン」「坦々麺」「牛肉高菜ご飯」「鉄観音茶飯」 初めてのご対面はいかに?とそっと横目で窺うと、スープをひと口味わったkiiさんは、ふかーい吐息をついた。 「うまいなぁ...。」 「でしょ!?」「サイドメニューも抜群の美味さだなぁ。」「念願が叶ったわね。」 そんな私たちの声を聞きつけたのか、責任者らしき人が、美味しい食べ方や素材に関する話をあれこれとして下さるのがとても嬉しかった。 初めて伺う話もあり、「むさし坊」にますます惹かれる私だった。 kiiさんは勿論、一回で虜になってしまったことはいうまでもない。 麺のコシはほどよく、無添加・自然素材のスープの後口のよさもなんとも言えず、盛んに「こんなラーメンは初めてだ。参った!!」を繰り返していた。 埼玉に居る間にもう一度行きたいとの思いが叶ったのは、帰阪の日の昼食。 日曜日だったのでゆうちゃんも一緒に出かける。 「むさし坊」には子ども席というのがないので、ゆうちゃんも今まで行ったことがなかったそうだが、kiiさんと一緒の折に、もう少し幼い子が座って食べているのを見て、これなら大丈夫だろうと連れ出してみたのである。 反応はkiiさんと同じくであった。 「美味しい!!」と黙々と箸を動かす彼女の、食べっぷりの良さと笑顔に、kiiさんと二人で「やっぱりね。」と顔を見合わせる。 このむさし坊体験は、kiiさんにもゆうちゃんにも非常に印象深かったようである。 kiiさんが帰阪した後、娘と二人で楽しく話題にしたものだった。 次回のkiiさんの埼玉行きの際は、「むさし坊」がきっちりと予定表に組み込まれているのだろうと。 全メニューを味わっていないので、またのお楽しみがふくらみそうである。 帰阪して仕事に出た折、住吉区の我孫子で吃驚した。 いつの間にか一画にラーメン店が軒を連ねている。半年見ないと「うらしま」の心境になる。 構えからして仰々しい店が多い。 中に一軒、雑誌にも取り上げられたという、いかにも自信ありげな看板の店があり、嫌がるkiiさんを押して味見に入った。 「あのむさし坊のラーメンを味わってしまったら、今度埼玉に行けるまで、もうラーメンは食べなくてもいいと思っているのに...。どうにも懲りないkeiさんだなぁ。」 店を出た後の恨めしげな表情のkiiさんに、「ごめん!!」と手を合わせて小さくなった私である。 |
10/19 | 埼玉にて(1) |
“ひとりごと”も長らくのご無沙汰でした。 一ヶ月近くも大阪を離れていると、生活のペースが戻るまでに時間が掛かる。 素早く切り替えができないということは、悪く言えば老化、よく言えば、慣れない環境でも懸命に生活してきたということか...。勿論、後者にしておくことにしよう。 ゆうちゃんとの生活は楽しいものだが、エネルギーの固まりのような彼女と接していると、その成長振りに目を見張る。 遊びもずいぶん変り、今はディズニープリンセスに夢中。 お気に入りのビデオも「トトロ」は一時お休みで、「美女と野獣」や「サウンド オブ ミュージック」に変っている。 お店屋さんごっこ、レストランごっこ、学校ごっこもかなり知能的になってきたようだ。 お尻フリフリの「チェッ チェッ コリ」はお腹を抱える面白さで、「キッ キッ キノコ」や「ゆうちゃんの世間話」と共に、私たちの思い出の中にしっかり陣取って、忘れられない情景になるのだろう。 埼玉行きは今回で5回目。 毎回のことだが、帰阪して一番に感じるのが大阪の交通マナーの悪さである。 車同士、或いは車対歩行者のそれを見ていると、埼玉は大阪よりずっと紳士的である。 ゆうちゃんの手を引いていることが多いからかとも思ったが、そうでもないらしい。 大阪では、歩道を渡ろうとしても渡れずに立ち往生している歩行者をよく見かけるけれど、大阪人は冷たいのか余裕がないのか...。 勿論、歩行者のマナー自体も、大阪はかなり悪いような気がするが。 埼玉では移動にバスを利用することが多かったが、バス停やバス内のマナーにはいつも感心させられている。 整然と並んで待ち、その待ち方が面白いとひとり楽しんでいた。 先頭の人が立っているところからきっちりと後に並ぶのである。 バス停から1m離れていてもである。 あるとき、時間待ちが長かったのでバス停から2mほど離れて立っていると、やはりその後にズラッと並んだのには驚いた。大阪ではこういう現象は起こらないだろうなぁ。 あつかましいおばさん連れが、ワイワイと姦しくしゃべりながらちゃっかり横入り。 そんな大阪の様子を長年見てきた目には、埼玉で見るこんな光景がとても新鮮に写る。 バス内の乗客も静かで、やかましく私語をすることがない。 子連れや体の不自由な人には、席を譲ったりと特に親切である。 県民性かと思ったが、電車を利用した時にはその感慨が覆されたから、これはどういう風に理解したらいいのだろう...。 埼玉に行って嬉しいのは、北海道の産物にちょこちょこお目にかかれること。 この季節は初めてだったが、子持ちのキュウリ(野菜ではありませんぞ。)に出会ったのは感激だった。 淡白な白身にたっぷりの子持ちは、実に40年ぶりの味わいだった。 私は店にあったほとんどを買い求め、冷凍便で大阪に送ったのである。 埼玉で好きなものがまだある。 白葱、太葱の類は安価で美味しい。毎回思うのだが、背負って帰りたいほどである。 車なら、多分二箱ぐらいは積み込んで帰阪するに違いない。 これからの季節はますます甘味が乗って旨味を増す。 冬場の埼玉で、狂ったように葱を食べた昨年を思い出す。 しかし、埼玉には太葱と薬味用の極細葱の葱文化しかなく、大阪でいうところの青葱(細葱)がないのは残念である。 納豆に合うのは、あの濃い味の香りのきつい青葱でなくてなんだろう。 極細葱では、イマイチ旨味が生かされないと思うのは私だけだろうか。 4年前には姿を見ることも無かったミズナが普及してスーパーの店頭に並ぶ様変わりに目を見張ったが、この調子で青葱(細葱)もいつか店頭に並ぶ日が来るのかもしれない。 もう一点嬉しいものはレンコンである。 太くてプリプリしたレンコンが安い。 細くて貧弱な、皮を剥いたら中身がなくなるような穴だけのレンコンではないのである。 「なんと美味しそうなレンコンだろう...。」 レンコンを使った料理が頭の中を駆け巡り、帰宅の荷物を送ってしまった後でまた二㌔も買い込み、おかげで手荷物がズッシリと重くなる。 肩こりで頭痛しながら食欲と二人連れで帰り着いた私を見て、kiiさんは呆れてため息をついた。 ところで、近くのスーパーで値段を見たら、なんと二倍以上もしていたのには驚いた。 「太葱とレンコンと子持ちのキュウリに引かれて関東に移住、なんて考えないでヨ。」とkiiさんが笑う。 目の前に大量のそれらが積み上げられている様子を思い浮かべる。 そうなっては値打ちがないのだと、私も充分に承知しているのだが、一瞬は心が動いたことである。 |