つれづれなるままに

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2002年1月
    
【炭焼きは楽しい人の縁とは...。複雑な思い。ジブリ美術館
     
01/27  炭焼きは楽しい
1月26日(土曜日)
多分、今日を除いては当分土曜日は休めなくなる。
作業には貴重な一日だったけれど、夜半から天候が悪くなるとの予報で、日帰りで様子だ
けを覗きに野迫川に行く。屋根代わりのシートの具合や、先週開栓し忘れて帰阪した湧き
水が気に掛かっていたのだ。
久しぶりにゆっくりと朝食を済ませ、のんびり気分で大阪を出る。
途中、農産物直売所と西吉野村の上辻豆腐店に寄る以外は予定がない。
「もったいないけれど、こんな日もいいね。」
30分も走って河南町
(かなんちょう)に入り、水越トンネルの手前で、二人同時に「アレッ、何
だろう!?」と叫ぶ。
竹炭を焼いているところ 辺りにはモクモクと白い煙りが立ち込め、男性が
一人、なにやら作業をしている。
この場所は、以前からチョットばかり気にかかっ
ていたのだが、人の姿を見かけたのは今日が初
めてであった。
「少しお邪魔してもよろしいでしょうか?」
私たちは途中下車をしてしまった。

男性は河南町環境ボランティア「ささゆり」の会長
の谷之木さんであった。「ささゆり」は現在55名
の会員を擁し、地域の空き缶やゴミを回収し、環
境の保護に努められているとか。
その一環として、周囲の山林を覆い尽くさんばか
りに席捲している竹を伐採し、炭を焼いているの
だそうである。お話を伺いながら、思いがけない
展開に吃驚する。
野迫川のログが一段落したら、取り組まなけれ
ばならない計画の一つに、炭焼きも含まれてい
る。kiiさんの顔が輝いたのは、言うまでもない。
一ヶ月ほど乾かすと焼成時間が短縮できるそうである。
「だいたい8時間から10時間焚いて火を止めます。一晩置いて明日の朝10時頃に開け
ますので、よかったら窯出しにいらっしゃい。」
有難いお誘いに心を浮き立たせながら、一路野迫川へ...。
(シートから漏れた水が、ロフトやログ内で凍りついていた。シートを二重に張り、雨仕舞い
を万全にする。湧き水の取水口は破裂を免れていたのでホッとする。)
1月27日
昨日のお誘いに甘えて、10時半頃河南町へ。
時折雨が落ちる灰色の空を眺めながら、会長が窯出しを思案しておられた。
私たちの姿を見てニッコリされた笑顔が、何とも穏やかで心安らぐ方である。
私たちのために竹炭を飾る竹のスタンドまで作ってくださっていた。
お話をしている間に、会の副会長新田さんや会計のテルさんが集まってこられる。
kiiさんも、微力ながらお手伝いに加わらせていただく。
サア、窯出しだ。ワクワクする。 ドラム缶を利用した窯は、一度に二窯を焼く。
一窯で17キロぐらいの竹炭が焼けるそうである。
4〜5年生の竹が竹炭としてはいいのだとか。
確かに、焼きあがった炭の光沢や澄んだ響きは、
若いものとはずいぶん異なる。

今回はたまたま片方の窯の修復作業があったの
で、構造をすべて拝見できるという幸運に恵まれ
る。

「竹はタール分が多いので...。」などと、話してくだ
さる注意点は、何もかもが自分たちの山暮らしに
必要な知識になると思えば聞き逃せない。
「炭焼きは簡単で、誰にも焼けて、楽しいもの。」
会長の言葉は、私たちにも出来るのだという安堵
と希望を与えて下さったような気がする。

冷え込んだ作業の後でご馳走になった、熱いコー
ヒーの美味しかったこと...。

また、貴重品の竹炭をありがとうございました。
焼きあがった竹炭。
環境ボランティアも炭焼きも、大仰に構えず自然体で楽しんでおられることがほんとうに
素晴らしい。
地域のことや山のことをいろいろお話しながら、またひとつ、いい出会いをいただいたと、
感謝の気持でいっぱいになった三時間だった。


01/15  人の縁とは...。

12日の夜、野迫川の電話が鳴った。
「明日11時頃お邪魔してもいいでしょうか?昼食の用意をして行きますが、そちらは何人
でしょうか?」
kiiさんが町で一度お目にかかったことがある方らしい。
このように連絡をいただく時は、翌日の作業の段取りが付くので本当に嬉しい。
不意打ちが一番困る。予定を立てて作業に取り掛かっているのがみんな狂ってしまう。
初対面から面識の在る方まで、多い時は延べ二桁ものアポなしの訪問者があり、そんな
日は「今日の仕事は終わり...。」と諦めるしかない。

初めての方に会うときは緊張する。人間誰とでも気が合う訳ではない。
特に私は、kiiさんに言わせると偏固な人間で気難しいのだとか...。 否定はしない。
緊張の面持ちでお迎えしたH氏ご夫妻は、いつか自然の中で暮らしたいという夢をお持ち
の、笑顔が実に素晴らしい気さくなお二人だった。
お茶をいただきながら、あっという間に旧知の友のような和やかな雰囲気が生まれる。
なんでも、大阪に出てからの最初の住いもごく近くであり、「知らずにすれ違っていた可能
性が大ですね。」と不思議なご縁に昔話が弾む。

細やかな心遣いをされる方達だとの印象をすぐに持ったけれど、お昼の用意に掛かられ
た時には、私たちは絶句してしまった。
お米は研いで飯盒に用意、豚汁の材料はみんな刻んである。
何種類もの魚や漬物、箸休め、コンロは勿論のこと魚類を焼く網までセットして、調味料や
お皿や割り箸、お茶まで用意されている。
私も何種類かの用意をしていたのだけれど、至れり尽せりの心づくしにはあまり慣れてい
ないのでひどくうろたえてしまった。
こういう場面は私の記憶には少ないので、慌てて同じことを何度も繰り返すという、無様な
失態も演じてしまう。
食事の用意をさせてはいけないと、敢えて野迫川に電話をされたのだと思い至り、その心
配りに胸が熱くなる。

仕事が詰っているときなど、町の家に前日に連絡をいただいても何の用意もできない。
まして野迫川に来てしまうと買い物をする場所さえない。
一番近いスーパーまでは往復1時間40分かかる...。
コーヒーやお茶菓子だっていつも用意が整っている訳ではないし、食事だって普段は二人
×回数分しか用意していない。不意打ちをするほうが悪いとは思うけれど、今までにばつ
の悪い思いをしたことが何度もある。

「山の中だし、作業している場所にお邪魔するのだから、せめて...。」と微笑まれるお二人
の、決して押し付けがましくないさりげなさを見ながら考える。
私は果たしてH氏ご夫妻のような気遣いができるだろうか...。
これほどの気遣いは決してできそうにない...。
その日の昼食は忘れられないものになった。
多分これから先、野迫川で度々お目にかかる機会があるだろうが、たくさんのことを学ば
せていただけそうな気がする。。

いろいろなご縁で野迫川倶楽部でひと時をご一緒した人たち...。
いい出会いをいただいて深いご縁が生まれた方達も多いが、中には考え込んでしまうよう
なことも少なからずあった...。
リンク先のA Style of SugiのSugiさんの言葉を思い出す。
「ネットは手段でしかない。基本は人と人」
「基本は人と人」という言葉が私は好きだ。いつも心に深く刻み込んで噛みしめている...。

 
01/10  複雑な思い。

9日、仕事が少し早く終わり帰宅の途上、車が停滞していて全く進まない。
「何でだろう...?」眺めていてハタッと気付く。
イオングループの支援を受けて再建を計っているマイカルが、在庫品を一掃するために
8割引セールを行うというニュースは、朝からラジオでも何回となく流されていた。
町の家からは自転車で5分の位置にサティがあるのだ。
仕方なく遠回りでやっと家に辿り着く。

リハビリに行くkiiさんを送り出し、私もサティに出かけてみる。
人ごみが嫌いだし、いつもならこんな催しは気が進まない。
「日が暮れるまでにまだ少し時間があるし、買い換えなければならないものも数点あるの
で行ってみようか...。」が本音。

着いて吃驚、何もない。
声を嗄らしてセールの終了を告げる声が響く。
F店では100台のワゴンが瞬く間に空になったと言う。
在庫整理と言う以上品物の数にも限りがあろう。が、店内には不満の声が露であった。
両手にいっぱいの荷物を抱えた人は、レジに二時間並んだと声高に話している。
なんでも9日には、全国の関連店舗で400万人がレジに並んだとか...。
売り出しが終了したにもかかわらず、長蛇の列で動けなくなっている車こそ哀れ...。

ガランとした日用品売り場を見回している私の横に、店員さんが小さなダンボール箱を
運んできて中身をワゴンに広げ始める。
「アラッツ!!」中にはずっと欲しかったTEPRAと専用のACアダプタ。それに小型の
12〜50倍の双眼鏡も...。双眼鏡は大型のものしか持っていず、山歩き用に小型のもの
が欲しいと思っていた。それらが買ってくださいとばかりに私の前にある。
思わず声が上擦る。「こ、これも8割引きなんですか?」
私がこの3点を専用カゴに入れた直後、ワゴン台にはたくさんの人が殺到した。
3650円をレジで払いながら、私は複雑な思いを拭えなかった。

店舗改装のためとはいいながら仕入れ値を切っての放出には、いずれ待っているリストラ
に泣く人たちの痛みも含まれていることだろう。
必死でこなしている社員達は、疲れ果てて目の下に隈も色濃い。
今日だけではなく、会社が立ち行かなくなってからの不安や心労はいかばかりか...。
斜陽産業の末端に属する半ば潜在的失業者の私たちだから、その心境がしみじみ判る。
いま日本には、こんな苦しみを抱えている人たちがどれほどいるのか。

安価で手に入れたものなのにズシリと重さを感じて、購入した三点の品を、私はまだ封を
切れないでいる。


01/07  ジブリ美術館

「東京の三鷹にジブリ美術館ができたんですよ。一度下見がてら行ってきますね。
こちらに来られたらきっと行きましょう。」電話の向こうからお婿さんの照れくさそうな声が
聞こえる。
「エ〜ッ、行きたい行きたい!! ネコバスもあるのかな。」
「面白そうで、お母さん気に入りそうですよ。こだわりのカフェは有機素材を使いストローも
麦の茎なんだそうです。好きそうなメニューがいろいろですよ...。」
気持ちのとっても優しい義理の息子は、いつもあれこれとさりげなく心遣いをしてくれる。

後日送られてきた詳細記事は、確かに興味を引くに充分であった。
「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「魔女の宅急便」...。
「行きたいなあ。」ため息をつきながら5枚のプリントを食い入るように眺める。
「な〜んだ、ネコバスは子供専用なんだって...。お子ちゃまの付き添いでも駄目かなあ。」
「オリジナルの短編アニメも見れるんだって...。ア〜、こんなものもある。いいなあ...。」
心はまだ行ったことのない三鷹に飛んでいる。
「何度声をかけても、ディズニーランドには行こうとしない人が...。」と娘が笑う。

私は美術館が苦手である。
しわぶきひとつ憚られるようなシーンとした薄暗い中に、取り澄ました感じで飾られている
絵画にはあまり心惹かれたことがない。
順路まで定められているような所はもってのほか。自由に観ることのできない美術館が、
何と多かったことか...。まして子連れでなど行かれやしない...。
そんなことが私をかなり美術館嫌いにしていた。
判らないなりに絵は好きだから拝見することはあるけれど、美術館なるものは敬遠してい
た。

でも、此処は美術館の規定概念を覆すような美術館であるらしい。
いろいろな要素がたくさん詰った、およそ美術館らしからぬ美術館。
考える人は考え、楽しむ人は楽しみ、人それぞれの、その時々の思いを大切にできる場
所...。
子供の心を忘れていない大人も楽しめる、いや子供の心を忘れた人には思い出させてく
れる所であるのかもしれない。

今年からは時折、東京行きの機会ができる。
遊びに行くのではないのだけれど、行きたい場所がだんだん増えて内心「困ったな。」と思
いながら、とても楽しみである。


 


  


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