つれづれなるままに

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2002年8月
  
【地際数センチの美学】 ごめんね...。
 
8/25  地際(じぎわ)数センチの美学

今、草刈り機にはまっている。
こんなに楽しい道具を他人
(ひと)に渡したままでいたなんて、なんと愚かだったことだろう。
とにかくスカッとするのである。
単純な道具ながら、結構奥が深い。
そういうとkiiさんはフッと笑う。
確かにチェーンソウほど難しいものではないし、大した技術が要る訳ではないが、使いこな
すには「それなりに...。」なのである。
平地は? 斜面は? 硬い草は? コシがなくて粘る草は? ツルものは? 這い性のも
のは? 背が高いものは? 安全に効率よく作業を進めるためには?
考えながら少しずつ上達していく。
使いこなしてこその道具だということを、体感している訳である。
それもただ刈ればよいというものではない。
草刈機に慣れてくると、地際数センチへのこだわりが頭をもたげてくる。
いかに地際に近く、尚且つ均一に刈り取るか...。
そこに草刈りの美学を感じているのは私だけだろうか?

汗を滴らせながら、作業の跡を眺める時の爽快感は格別である。
なんと美しい光景ではないか!!
ひとりごちながら、しばし自己陶酔の世界に浸ってしまうのである。
「ふつう、そんなことに〈美学〉なんて感じるかなあ...。」とkiiさんは冷たい。
でも、「keiさんが草を刈ると、鋸刃が傷んでかなわないよ。荒っぽいんだから。」とぼやき
ながら、草刈り機を放さない私を見て内心ほくそえんでいるに違いない。
これで「アッツ、しまった。切っちゃった...。」とビクつくこともなくなり、「切ったのね。」と
ジト目で見られることもなくなったのだから...。
彼にとって草刈り機からの解放は、轟々たる非難からの解放なのである。


8/01  ごめんね...。

少し前に、重なり合って生い茂っている木々の枝をかなり整理した。
ウツギの伸び方が特に激しくて、6種のウツギを植えてある辺りはバッサバッサと、思い切
りよく切り詰めた。
その数日後、草を引きながらふっと見上げた私の目に、見慣れないものが飛び込んで来
た。訝しみながら近寄って吃驚...。
空っぽの鳥の巣があるではないか...。
家主は一体誰だったのだろう??

自然の素材を上手く使っての、芸術作品の
如き家作りには感嘆してしまう。

野迫川倶楽部の周辺にはたくさんの鳥たち
が棲んでいるようだが、私たちにとっては
非常に疎い分野である。
kiiさんなど大切なブルーベリーを庇いなが
らも、鳥たちの来訪を楽しんでいる節があ
る。
野迫川倶楽部にも、鳥たちが自前の巣を掛けるようになってきたことが何だか嬉しくて、「こ
んなことがあるのだから、枝払いは気を付けなければならないなあ...。」と我が身に言い聞
かせることだった。
そして一週間が経ち、鳥の巣の存在が記憶の端にしまわれた頃の夕方、「keiさん、ちょっ
と早く...。」何となく切羽詰ったような、いつもののんびりしたkiiさんらしくない鋭い呼びかけ
が野迫川倶楽部に響いた。
ひょっとして、まだ倶楽部内では見たことがないけれど、マムシでも出てきたかと慌てふた
めいて駆けつける。

kiiさんの指差す先にはあの鳥の巣があった。
枝が払われて以来剥き出しになって風雨にさらされ、ぼろぼろになりかけた家人のいない、
あの鳥の巣...。・・・と、かすかな鳴き声が聞こえる。
「エッツ、あれなに??」

kiiさんが小さな声で囁く。
「空っぽじゃなかったんだよ...。」

「エ〜ッツ、卵があったの??」

巣の中には小さな嘴が見えるではないか...。
「どうして? ああ、どうしよう...。」

「ごめん、ほんとうにごめんね...。」
支えていた二本の枝を切られてしまい、グラグラ揺れていつ落ちるか判らないほど頼りな
く、やっと一本の枝に乗っているだけの鳥の巣。枝葉という目隠しが無い状態では、獲物と
して狙われる危険性も大きい。雨だって降り込むだろう...。
強風が吹けば転がってしまうに違いない...。
せめて落ちることだけは避けてやりたいと、kiiさんに尋ねる。「支えを付けてやれない??」
「人間が手を加えたら、危険を感じた親がエサを運ばなくなるかもしれない。それを考えた
らこのままにしておくのがいいんじゃないかな。ひょっとしたら巣立てるかもしれないから。」

倶楽部の木々はまだ成長段階で、大きく枝を張り安全な状態になったら鳥たちも安心して
巣を掛けてくれるかもしれないと、私たちは思っていた。
こんなに早い時期に鳥たちが巣を作るなんて考えもしなかった上に、目に付く所には気配も
なかったから、不用意に枝切りをしたことが心から悔やまれる。

どうか巣立つ日まで無事でいておくれと、祈らずにはいられない。

 
 

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