つれづれなるままに

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2002年10月
  
【星空に響く歌声】些細なことだけれど..。“あの頃”という名の駅
   
10/24  星空に響く歌声

町の家は、何にもないけれど自然だけは豊かだという山の暮らしからは、考えられないような
便利な所にある。
便利だけれど心地よくはないその暮らしは、捨て去ることに勇気を必要としない。

最近仕事以外では、町にいても街に出ることは特別の用事がない限りほとんど無いし、出ても
そそくさと用件だけを済ませる。例外はたまに行く書店だけである。
だからJ&Pという家電量販店の店じまいセールも知らなかった。
店じまいセールの文字を見るとドキッとするけれど、店舗改装をするだけなのに店じまいと銘
打つのは解せない思いがある。
「正しい店じまいではないでしょう?」とつい心の内で呟いてしまう。
たまたまプリンターを見に行く用件があって訪れた際のことである。

大して年数が経っていないにもかかわらず旧式になったA3対応のレーザープリンターは、活
字が綺麗だけれどもトナーが呆れるほど高く、最近のものの三倍はする。
A4対応のインクジェット式プリンターなら新機が買える。
おまけに白黒で、何故か純正トナーでも持ちが悪い。
リサイクルトナーなるものもあるそうだが、それもそこそこ結構な価格である。
流行のカラーのインクジェット式プリンターに買い換えたほうが、ランニングコストが数段安価
になるのである。
なんだか釈然としない話である。最近釈然としないことがなんとも多い...。

もう終了日に近かったその日は、陳列されたPC関連機器も残り少なで、開店後に再訪するこ
とにして諦めて帰ろうとしたのだが、ふっとCD売り場が完全閉鎖されるという文字を目に留め
てしまった。これがほんとうの「店じまい」なんだと思うけれど...。
この売り場が無くなるのも寂しいなあと、フラッと入ってみる。
ウロウロしていて50%OFFのコーナーを見つけた私は、目がクラクラしてしまった。
欲しいCDがたくさんある!!
腕組をして考え込んでしまう。選択するのが難しい...。
「これも、これも。」などと選んでいたのでは家計がパニックを起こすし、主婦としての面目が立
たない。大好きなクラシックには目を瞑り、私が選んだ5枚は...。
・「魔女の宅急便」のサントラ盤
・「思い出のメロディー」二枚組
・「歌声喫茶」
・「フォークダンス」

・ヨーヨーマの「SOUL OF THE TANGO」
kiiさんはこの支離滅裂な選定基準が理解できないと笑い転げた。
一番呆れかえったのは「フォークダンス」だったらしい。
「オクラホマ・ミクサー」「コロブチカ」「タンゴ・ミクサー」「マイム・マイム」を始めとして、代表的な
フォークダンスが収録されているこの一枚は、聴きながら身体が自然にリズムを取る。
ヨーヨーマは野迫川にも同じ盤を置いてあるけれど、町に居る時も聴きたかったから二枚目。
“歌声喫茶”は「山のロザリア」や「北上夜曲」、「川は流れる」「惜別のうた」などが入っている
し、ジャケットがセピア色でなんとも郷愁を誘う。
“思い出のメロディー”二枚組には「寒い朝」「いつでも夢を」「湖愁」などが収められている。

“思い出のメロディー”二枚組と“歌声喫茶”の計三枚は、熊さんご夫婦と呑んだ、先の連休の
野迫川の夜にも大活躍した。
4人の歌声が夜の山に響き渡り、星空にとけこんで行く。
さしものイノシシも吃驚して鳴りを潜めていたようだった。
カラオケは苦手で誘われても行かない私たちだが、この時ばかりはしっかりと歌声喫茶シーン
を展開していた。
自然の中でお腹の底から声を出して歌うのは、実に爽快である。
まして気の合う仲間と一緒なら、そこに愉快が加わる。
焚き火が燃えさかる音や谷から引き込んである水が流れる音も、丁度よい伴奏になる。
1キロ四方人家無しの一番のメリットは、ケモノたち以外には迷惑をかけるものがないこと。
もっとも彼等には再々悩まされているのだから、たまにはこんなこともいいだろう。
コスモスをマイク替わりに歌う中年たちの可愛さときたらなかった。(...と思う。)

なお、時折しっかり主婦(?)に立ち返る私は、今までに溜まっていたJ&Pのポイントで支払っ
たので、今回のCD購入の現金支出はゼロである。

追記
数日後、帰宅途中に立ち寄ったブックオフで、一枚250円になったCDを見つけた。
盤も傷が無く綺麗なので4枚を購入してきた。
「カントリー&ウェスタン・ベスト20」
「ホワイト・クリスマス」(ビング・クロスビー、懐かしい...。)
「ジャズに抱かれて」「アランフェス協奏曲」
思いがけず手に入った10枚のCD。
支離滅裂だからこそ、当分楽しめそうな気がする...。

  
10/11  些細なことだけれど..。

ネットで地域情報を検索していて何気なくプロバイダー&通信網を開き、またまた何気なく眺
めていて短い一文に目を留めた。
一部を除き全国の90%
がフレッツISDNのサービス区域になったとのこと。
「嘘!!」(←NTTさん、ごめんなさい。)
「いつだって過疎の地域は捨て置かれるじゃないの。野迫川村はいつも、その一部の地域に
入っているもの。」
ADSLでなくてもいい、1.5Mでも8Mでなくてもいい、12Mなんて勿論望んでなどいない。
速さなんて論外なのだ。せめて、せめて過疎地域も常時接続のサービスだけは受けれるよう
になって欲しい。切なる願いだった。
野迫川に居る時間が増えるに従って、この地域の通信手段の著しい遅れが関心事の一つに
なっていた。
目の前に突きつけられたこの問題は、知恵を駆使しようが解決できるものではなかったから、
大きな悩みとしていつもどっかりと私の心に鎮座していたのである。
最寄の中継局までの距離が長いのは山暮らしでは仕方が無いことだが、恐ろしい通信料に
圧迫される生活のことを考えては、何度もため息をついていたものだ。
「どうせね一部地域なんだよね。」と思いながらサービスエリア検索を掛けてみてギョッとする。
なんと野迫川村がフレッツISDNのサービス適用区域になっているではないか!!
「嘘でしょう!!」(←NTTさん、再度ごめんなさい。)

信じられない思いの私は、ご丁寧にも116にTELする。
これは、しっかり言質を取らなければ安心できないという私の困った性格による。
恐る恐る用件を切りだした私に、いとも明快な担当者の答えが返ってきた。
「9月末から野迫川村もサービス区域になったんですよ。お申し込み後一週間で使えるように
なりますが、今ここでお受けいたしましょうか?」
「アッ、イエッ、アノ...。ありがとうございます!!いずれ改めまして...。」
応対された方は、感激で声も出なかった私の思いなど知る由もない。

ログ内が埃まみれから解放されたら、山からのネット通信が可能になるのだ。
追加料金の心配をしなくても、安心してネットができるのだ。
通信速度など二の次、三の次。贅沢は言わない...。

些細なことだけれど、常時接続が可能になったことで目の前が一気に開けたような嬉しさ。
山暮らしの関門がまた一つクリアーされて、頬が緩みっぱなしの私だった。

  
10/07  あの頃”という名の駅

最近僅かな時間を見つけては整理をしている。
野迫川に移動させるもの、町に置いておくもの、不要なもの...。
物は買わないようにと自重しているけれど、思い切って処分しなければならないものが生活の
中で増え続けている。
いつか要るかもしれないと考えては溜め込んでしまう、参考資料などの類が何とも多い...。
「スキャナーで取り込んで、紙や雑誌は処分する筈だったんじゃないの??」
痛い言葉である。

その日も隙間時間を見つけて、書棚の整理をしていた。
本の奥に落っこちた、埃だらけの古いテープが3本。
「アッ、こんなところにあったんだ。」
娘が幼い頃のオシャベリを録音したテープを、何処に仕舞ったものか判らず、このところ記憶
をたどっていたのである。
タイトルを書いていないなんてまったくズサンだと我が身を叱りながら、取りあえずテープを聴
いてみる。
「アレッ、これなに??」
一本目〜kiiさんの下手な(ゴメン)尺八の音色が流れてくる。
二本目〜kiiさんの民謡の発表会の様子。
遥か昔に、付き合いで民謡を習っていたことがある。「なんだ、違うじゃないの。それにしても
昔の声は張りがあるものだ。上手下手は別として...。」
そう独りごちながら、期待して三本目を再生する。
そこからも娘の声は聞こえない。
何だろう。何だか変だな。何人かで話しているような...。
怪訝な面持ちで10分ほど聞いたところで、やっと理解できたのである。
どうやらこれは娘が幼かった頃に通っていた保育所の、「親の会新聞」の編集会議らしいと。
K君W君と娘の、仲良し三人組の母親達が主になって新聞作りをしていた一年間の、ある日
の編集会議風景がそこにあったのである。
それぞれが連れ合い殿同伴で、場所はどうも我が家らしい。
子供たちの声がしない所をみると、お泊り保育の夜だろうか...。

何故こんなテープが存在するのか不思議だが、「これどうやって録音するの?」と言う声が聞
こえるところをみると、後から記事を起こすなどの何らかの必要性があったのだろう。
二十数年も前の自分たちの声は若々しくて、過ぎ去った歳月をふっと懐かしむ...。
そういえば丁度今、仕事に子育てに一生懸命の子供たちの年代なのである。
「お酒がないとしゃべれないかな?」と言いながら、流れ出る言葉には子育ての楽しみや悩み
が溢れていて、現代の子育ては複雑になっているというものの、今も昔も中身は大して変わっ
てはいないものだと実感させられる。
このメンバーが集まってお酒抜きということもあったのかと、ふっと笑みが浮かぶ。

テープの終盤にはもう寛いでいるのか「さだまさしのコンサートチケットが手に入らなかった。」
などという話題も飛び出して、そういえば「さだまさし」を聴き始めたのはW君のお母さんに薦
められたのがきっかけだった...。
先頃の「さだまさし30周年記念コンサート」にもきっと駆けつけたに違いないと、着こなしが上
手でオシャレだった彼女を思う。
子供たちがそれぞれの道を歩き出した頃から、親達もだんだんに噛み合わなくなり、疎遠に
なって久しい。
K君は結婚して山小屋のおじさんになるべく修行中だそうだが、W君はどうしているのだろう。

思い出が走馬灯のように浮かびあがる、古い90分テープだった...。

   
    

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