つれづれなるままに |
2003年11月 |
11/20 | 海(うみ)ちゃんのこと |
京都から毎週のように、片道4時間をかけて野迫川に通っている人がいる。 海ちゃんご夫婦と初めて会ったのは、もう五年ほど前のことになる。 A新聞に掲載された野迫川に関する拙文に目を留められ、切り抜いて手帳に挟み、いつか会いたいと思い続けていたそうである。 ある日、野迫川村の自然を楽しんでいる私たちの知人のK氏の元に立ち寄り、「こんな人を知りませんか?」と尋ねたのである。 「この人、親しいんですよ。」 K氏とは、顔を合わせるとコーヒーやお酒を楽しむ間柄だったから、尋ねられたほうも吃驚したそうな...。 彼等の所はメインストリートに面しているが、私たちの所はそこから車で5分ほど離れた枝道に入るから、なかなか目にはつきにくかったようだ。 探して探して、聞き回っていたのだという。 その日、もう暮れかかった時刻だったが、Uターンして私たちの所を訪ねて来られたのだった。 初めて会った人なのに、旧知のような親しさがあったのが不思議だった。 彼女のことを海ちゃんと呼ぶのにも、さほど時間は掛からなかったような気がする。 それから二年間ほどは、ご夫婦で頻繁に野迫川に通っていた。 彼女は雰囲気のいい自然の庭を作り、彼はコツコツとマイペースで家を造っていた。 同じ山の庭でも、お互いの個性があって表情が違う。 時々出会って、励まし合いながらの交流が続いていた。 今はご主人だけが週末に通って、相変わらずコツコツと一人で家造りをしている。 彼女とは時折電話で話をするけれど、あまり会えなくなった。 三年前から彼女は大きな畑を借り、、野菜作りに精出しているのだ。 週の半分は仕事を持ちながら、忙しく畑に通っている。 バイタリティの固まりのようにいつも元気がいい。 「畑を借りることが出来るようになったのよ。」そう告げられた時は吃驚したものだ。 「あなたが刺激になっているのよ。ブルーベリーや無農薬の野菜、手作りの楽しみに目覚めさせてくれたでしょ。」と彼女は笑うが、私は私で彼女からたくさんの元気を貰っている。 いつもkiiさんのことを気遣ってくれる心根も、優しくしみいる。 彼女は柴漬けもとても上手に作る。 自然の色合いと風味、添加物なしの安心と共にいただけるから尚のこと美味しい。 そんな楽しみも、彼女の気持を畑に向けさせた一因だったようである。 その海ちゃんから丹誠込めたたくさんの野菜が届くと、「野菜作りの腕も上げたね。」と、箱を覗きながらkiiさんも感嘆する。 野菜の旨味も年々増しているようで、「土作りも頑張っているな。」と自分のことのように嬉しい。 私は野菜たちの表情に、あの日、「あなたが刺激になっている。」と真剣な目をしていた彼女を重ねている。あの時の海ちゃんを傍らに感じて、胸が熱くなる...。 |